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「結婚しようよ」

吉田拓郎のファンにとって、
「落陽」は特別な感慨をもって語られる。
その「落陽」とともに始まり、「落陽」で終わるのが、
この映画「結婚しようよ」。
全編、拓郎の歌、歌、歌。
「半落ち」の佐々部清監督がずっと作りたかったという
「神様・吉田拓郎」の歌で綴った映画である。
1958年生まれの佐々部監督は、年齢的に「伝説」のつま恋コンサート(1975年)は乗り遅れ組。
だからこそ、「同時代組」に負けまいとするスピリットもあるだろう。
私も「乗り遅れ組」だから、彼の熱いハートは十分理解できる。
選曲も、通ごのみ。かなり酔います。
拓郎は75年の「つま恋」後も、「篠島」だったり、何回も「伝説」を作ってきた。
「テレビに出ない」と言っていたが、そのうち出演、「出たがり」を認めたこともあった。
「これからは昔の歌は歌わない」といった、その舌の根も乾かぬうちに、
やっぱり「落陽」を歌い、引き返してくることも数回。
そのたびに、彼は新しい魅力を身につけて、その分、ちょっと丸くなった。
丸くはなっても、負け惜しみは健在。
自分の抱える矛盾を平気で跳び越える、そこが
拓郎の憎めない魅力の一つなのである。
大人になってから聞く「人生を語らず」は、歌詞の深さに慄然とする。
これを20代に書いた男の頭の中を、見てみたくなる。
「明日に向かって走れ」の甘いイントロの響きに、希望が湧いてくる。
どの歌も、コトバとメロディに力がある。
そして、声に、説得力がある。
拓郎、君はカリスマ。
監督は言う。
「映画『結婚しようよ』は青春映画ではなく家族の物語になりました」
そこに、ちょっと不満がある。
いいのか、それで?
歌を捨て、家族第一を貫く平凡サラリーマンの頑固オヤジが、
羽ばたこうとする子どもたちを囲い込もうとする、
それを全面肯定しちゃって、いいのか??
マイホームパパもいい。
頑固オヤジもいい。
だけど、
今どき「夕食を家族そろって食べる」ために、父親がどれだけ苦労したか、
それをもっときちんと描かない限り、
「俺は今まで『会社』という体制と闘ってきたんだ!」という三宅裕司のコトバは響かない。
「パパは平凡なサラリーマンに敢えてなろうとしている気がする」という娘のコトバは響かない。
拓郎のファンが、拓郎の歌を使って綴る映画なら、
拓郎の歌はなつメロではなくて、プロテストソングであってほしい。
「それでは、今までの俺の人生を否定することになる」なんてコトバ、
拓郎信者には似合わないよ。
矛盾だらけの人生で、何度も何度も自己否定をしながら、
それでも「自分らしさ」を求め続ける拓郎の苦しみとカタルシスは
歌ほどに映画から漂ってこなかった。
「越えてゆけ、そこを! 越えてゆけそれを!」
「人生を語らず」のリフレインが
もっともっとトンガって生きなさいよ、という
「いい大人」になった私達「信者」へのご託宣になる。
ほのぼのホームドラマがハッピーエンドを迎えた後に登場する
2006「つま恋」の拓郎のステージは圧巻。
人生何度つまづいても、そこから最高の人生を紡ぎだして到達した2006の拓郎の顔と声は、
はっきり言って、
映画の中で、もっとも光っていた。
定年を迎えようかという男たちが、自分の若かりし頃を思い出すとともに、
「昔はよかった。今も、これでいいんだ」と自分たちの人生を肯定したい場合には、
サイコーの映画であります。
2月2日から、東劇その他で全国公開。
「つま恋」に駆けつけた人は、大画面の中に自分をみつけるためにもどうぞ。

ゴールデン☆ベスト 吉田拓郎 THE LIVE BEST

 ~Forever Young~Concert inつま恋2006 / 吉田拓郎/かぐや姫
娘役で歌手として登場する中ノ森BANDのAYAKO、歌、うまいです。
こちらも注目。

【送料無料選択可!】Oh My Darlin’ / 中ノ森BAND

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