トーマス・マンに挑戦の第一号は「トニオ・クレーゲル」でした。
ドイツの男子校。
金髪の美少年と、彼を慕う南国の血を持った黒髪の少年。
えーっ??
これって「トーマの心臓」?
これがフランスだったら、「風と木の詩」?
…というわけで、
私は本を読むのだけれど、出てくるイメージはハンスとトニオというよりも、
トーマとユーリだったり、あるいはジルベールとセルジュだったり。
もちろん、内容は違います。
設定や雰囲気が似てるというだけです。
マンはいろいろな人に影響を及ぼしているんですね。
読み終わった感想としては、
厳格で名家の出であるドイツ人の父親と、
芸術の香り高く情熱的な南国の出の母親を持ってドイツに住む少年トニオ・クレーゲルの、
2つに引き裂かれたアイデンティティとコンプレックスの大きさを感じました。
自分は「緑の馬車に乗ったジプシーなんかじゃない」と何度も繰り返していうところ、
好きになる人は、みな金髪・碧眼であること、
奔放に生きれば生きるほど、どこか居心地が悪くなってしまうところ、
かつて自分の住んでいた邸宅に13年ぶりに足を踏み入れた時の、
懐かしさより虚しさと哀しさが押し寄せるような、それでいて静かな描写…。
遠くから大好きなハンスやインゲの華やかさをみつめる苦しさは、
きっとたくさんの人たちの心をつかんだことでしょう。
それにしても。
少年時代と13年後という、2つの時代が非常に鮮やかに魅力的に描かれているのに対し、
その間にある「芸術談義」の、何とかたくるしいことか!
読む人が読めば、非常に高尚なのかもしれません。でも、
これは小説ではなく、もう演説に近かった。
所々、なるほど、と思う記述はありましたが、
申し訳ない、ほぼナナメ読みでございます。
ゲージツ家の特権意識がフンプンといたしまして、
ちょっと受けつけなかったなー。
それが「コンプレックス」の裏返しだったとしても。
たくさんの人が「青春の書」として記憶にとどめている一冊。
きっと私は読む年齢を逸してしまったのかもしれません。
まだ読んでない人、
早く読みましょう!
短いですから、大丈夫ですよ~。
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