映画・演劇・本・テレビ、なんでも感動、なんでもレビュー!

  1. 7 view

「プーチン政権の闇」


プーチン政権の闇
ロシア国内のプーチン人気は、すごいらしい。
石油の高騰も背景に、経済成長著しいロシア。
建国以来、常に西欧から「田舎侍」的な扱いを受けてきたロシアにとって、
EUのお歴々と互角にわたりあう、
弁舌さわやか、若くエネルギッシュな大統領は
対外的にも自慢のタネらしい。
そして国内では、
ソ連崩壊以来続いていた「混乱」「治安の悪さ」を一掃、
「安心」して暮らせる町を作ってくれた功労者でもある。
(今、都市では夜中のショッピングが流行っているという報道もあったほど)
だから、
プーチンの支持率は8割ともそれ以上ともいう。
その結果が12月2日に行われた下院選挙にも現れている。
プーチン率いる統一ロシアは、450議席の3分の2以上を獲得した。
すべて比例代表制のこの選挙、
統一ロシアの名簿第一位は、なんと・・・プーチンその人!!
ありえます? 大統領ですよ!
国会議員になるためには、大統領を辞めるしかないんですって。
プーチンの大統領任期はあとちょっと。
実は、ロシアの憲法では大統領は2期8年しかできません。
プーチンの2期目は、2008年で終わるんです。
そこで、いろいろ言われている。
今大統領を途中でやめちゃって、
次の選挙で仕切りなおし、また大統領になるんじゃないか?とか、
いやいや、国会議員の議長におさまって、「院政」をしくんじゃないか?
あるいは、首相になって、次期大統領を「コントロール」するんじゃないか?
とにかく、
今のロシアは、プーチン抜きには語れないようです。
ところで、
プーチンって、ソ連時代はKGB(秘密警察)で働いていたのをご存知ですか?
「だから治安関係に強いのね~」
・・・と、単純に思わないでくださいね。
若い人は知らないかもしれないけど、
「秘密警察」っていうのは、民主主義の対極にあるものなんですよ。
密告を奨励し、反政府主義者たちを尾行・盗聴・監視。
「反政府主義者」というと、テロリストとか、そういうイメージですが、
「このやり方、おかしくない?」なんて言っただけで「反政府主義者」ですから。
今の日本でいえば、「年金ちゃんと払え!」と叫ぶのも、
薬害被害者を救済するために署名するのも、
みーんな「反政府主義者」ですから。
日本でも、戦中は「特高警察」というのがあって、恐れられていました。
今、私たちには「理由なく逮捕されない権利」というのがあります。
裁判所の「礼状」がないと、強制的に連れていかれない、というもの。
これ、
先人たちのものすごい努力と、苦闘の末に勝ち得た権利なんです。
現在のロシアに「KGB」はありませんが、
ほぼ同じ形態の「国家保安局(FSB)」というものがあります。
体制側の人にとっては、KGBだろうがFSBだろうが
「それは、悪い人をつかまえるところ」にすぎず、自分には関係ない、と思っている。
けれど、
今多くの人々が、何の理由もなしに身柄を拘束され、
裁判もなしに処刑されている現実を、多くのロシア人は知りません。
「理由がないはずないじゃない」
「きっとその人たちは悪いことしようと思っていたのよ」
「政府に逆らうなんて、それだけで悪いことだもんね」
かつて、日本でも皆そう思っていました。
今もそうかもしれない。
でも、本当に「理由がある」のか、
「拘束」された人々は「拷問」などをされていないか。
私たちは、そこをはっきりできるような社会的システムを、
戦後ようやく手に入れることができたのです。
私も、ロシアって、共産主義が崩壊して、いろいろ混乱はあったけど、
今はずい分よくなってる、と思っていました。
だから、この本を読んで、ものすごくショックです。
北朝鮮やミャンマー(ビルマ)と、
一体どこが違うのかって思ってしまいます。
プーチン政権の闇」という本は、
多くのジャーナリストたちが「事実」を報道しようとして「FSB」ににらまれ、
その多くが殺されていったことを伝えています。
チェチェンという、つい最近まで公然と政府を相手取って内戦をしていた地区で、
今回の「投票率が99%だった」ことを、
皆さんはどう考えますか?
自由な意志で投票できる国では、
逆にこれほど高い投票率はありえません。
「何か」の力が働いている。
強制か、恐怖か。
遠い国の現状は、私たちにはわからない。
それを知らせてくれるジャーナリストの入国は厳しく制限され、
政府関係者と一緒でなければ取材はできない。
それでも「関係ないや」でなく報道してくれる人たちがいるからこそ、
私たちは真実を垣間見ることができる。
プーチンは、憲法を改正して大統領の多選を合法化するのでは?という話も出ている。
「多選禁止」の法律を改正して「永久大統領」「永久護民官」などになった人物は、
ナポレオンなど歴史上たくさんいるけれど、
「自分が一番偉いときに、自分がずーっと一番偉いままでいられる法律改正をする」なんて、
絶対おかしい、というのは、
歴史の結末を待たないまでも明白なんだけど。
民主主義というのは、本当にこわれやすいもの。
一人ひとりがしっかりしていないと、
あっという間に「国民」という名の奴隷になってしまう。
それは、
「○○の国だから」ではなく、
どんな国でも同じことだと思うのです。
だから、思う。
私たちの国は、大丈夫??
民主主義は、真の報道の自由は、守られている?
ロシアに「これっぽっちも報道の自由がない」わけではない。
大元は首根っこをつかまえ(テレビ局はほとんど政府系)、
大勢に影響のないところではいくらでも吠えさせている。
そして「わが国には言論の自由がある」ことの根拠とする。
・・・というくだりが、本の中にあります。
日本だって、気がついたら・・・。
そうならないためには、どうすればいいのか。
いろいろ考えさせられる本でした。

本の最近記事

  1. 「桜桃忌」に寄せて

  2. 「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」@村上春樹

  3. 「ヴィヨンの妻」@シネマナビ342

  4. 「人間失格」@シネマナビ342

  5. ユゴー「クロムウェル序文」と「エルナニ」

関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。


Warning: Undefined variable $user_ID in /home/nakanomari/gamzatti.com/public_html/wp-content/themes/zero_tcd055/comments.php on line 145

PAGE TOP