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「ワーニャ伯父さん」


ワーニャ伯父さん
「かもめ」を新潮文庫で読んだ私。「ワーニャ伯父さん」も収録されていました。
「かもめ」と「ワーニャ伯父さん」は、同じような土地が舞台です。
田舎の領地みたいなところに住んでいる、真人間と、
彼らからの仕送りをガンガン使いまくる都会人。
都会人が田舎に来ると、田舎はてんやわんやになって
労働そっちのけになってしまう。
そんな中で、
グチっぽいワーニャ伯父さんの長年の恨みつらみが、
最後に大爆発しちゃう、
そんなお話です。
借りたほうは無邪気に借金を忘れているが、
貸したほうは死んでも忘れないっていう、アレです。
やっぱりお医者さんがからみます。
チェーホフはお医者さんだったからなんでしょうかね。
「かもめ」では、
医師のドールンがソーリンに向かって
「60歳にもなって、自分の人生悔やんでみても仕方ない」みたいなことを言います。
ワーニャ伯父さんは、まだ47歳ですが、人生悔やみっぱなし。
完全に「負け犬」決定!みたいに自認。
この人のグチっぽさには呆れますが、
そのグチを聴きながら(読みながら?)
あ! これ、太宰の世界だ! ・・・と感じました。
年の離れた男の後妻になっちゃった自分に満足できないエレーナと
地味で器量もよくなく、黙々と働くだけの先妻の子・ソーニャのやりとりは、
ちょっと「斜陽」を彷彿とさせます。
先妻の兄であり、姪のソーニャをこよなく愛するワーニャ伯父さんは、
実はエレーナに昔から惚れていた。
「なんであの時、プロポーズしなかったかなー」
・・・後のまつりです。
医師のアーストロフが、エレーナに迫るところは、かなりエロいです。
私の中では、「かもめ」の配役がそのままよこすべり。
麻実れいさんのエレーナに、中嶋しゅうさんのアーストロフがいんぎんに、強引に、キス!
そして最後は、エレーナのほうが、アーストロフに・・・。
女のしたたかさがよく描かれてます。
黒澤明の「夢」に出てくるセリフにもありますが、
「それまでかたくなだった女が(肌を)許す時」は、すでに心は離れていたりするもので。
ソーニャは小島聖さん。ワーニャ伯父さんは、勝部演之さん。
こうして、特定の人を想定して戯曲を読むって、また味わいがあります。
エレーナは、涼風真世さんあたりだと、また艶やかかも。
あと「三人姉妹」「桜の園」の文庫も買ってあるので、
こちらもがんばらなくては。

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