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「月のうた」


月のうた
本を手にとった時は、
「星月夜」「アフアの花祭り」「月の裏側で」「真昼の月」という、
4つの短編集なのかな、と思ったのですが、
実は、全部つながったお話です。
ただ、語り手が全部ちがう。
「星月夜」は中学生の娘・民子、
「アフアの花祭り」はその継母・宏子、
「月の裏側で」は民子の生みの親である美智子の親友・祥子、
「真昼の月」は民子の父・亮太がストーリー・テラーとなっています。
前の章で語られたことを、次の章では違う視点から見せられる。
それを繰り返しながら、
みんなが気を使い、悩み、おじけづき、決断し、一歩踏み出し、
やさしく力強く生きていくさまが、心地よく描かれています。
最初は民子が親のことを「父」とか「母」とか言わずに進むので、
ちょっと違和感があるのですが、
そこがまた大切なところです。
不器用でかたくなで、あまり語らない民子。
彼女が幼い時から抱いているある疑問の氷解とともに、
彼女が少しずつ変わっていく軌跡をたどる小説でもあります。
キーパーソンは、祖母と、祥子の息子・陽一で、
一人も「悪人」が出てこない中でも、この二人は特に光ってる。
読み進むうちに、心がなごみ、
読み終わると、体中があたたかくなるような本。
それぞれの「独白」に、
思わずのめりこんでしまいます。
自分の中にある「わだかまり」と、どう向き合っていくか。
人の人生を読んでいきながら、
気がついたら自分の心の「枷(かせ)」が一つ取れて楽になっている、
そんな感じ。
個人的には、若い後妻の宏子の内面に、一番共感したかな。
読む人によっていろいろに読み解くことができ、
おそらく何年か経って読み返したら、
前と違う登場人物にいたく共感したりしそうな物語です。
難しくない語り口なので、現代のおとぎ話のような感じで読めるでしょう。
おすすめ!
著者の穂高明さんは、この小説で第二回ポプラ社小説大賞の優秀賞を受賞しています。
また、
リビングBOOK大賞の「ベストセラーの予感!」部門にノミネートされています。
この本を読んで、
「よかった」「みんなに読んでほしい」「きっとみんなに愛される!」と思った方は、
「リビングBOOK大賞」の方にぜひご投票ください。
投票者の中から抽選で、デパート共通商品券や図書カードが当たりますよ!
えるこみ「ミセスの本棚」では、他のノミネート作品についても紹介しています。
私を含め、5人の“BOOK大賞応援隊”ブロガーが、
毎週ノミネート作品の書評を書いて、紹介しているので、
それらも参考にしてみてくださいね。
今週は、MOGUさんが「しゃばけ」、
コニコさんが「中国の危ない食品」です。

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