昨年は、素晴らしい演劇がたくさんありましたが、
その中でも市村正親主演の「炎の人 ゴッホ」は大変見ごたえのあるものでした。
かつて民藝で大当たりをとったこの舞台は、
三好十郎の脚本です。
三好十郎(1)
さて、
劇場で思わず買ってしまったアーヴィング・ストーンの原作小説
「炎の人ゴッホ」。
中公文庫つまり文庫本なんですが、
なんと全部で800ページ以上!
片手で持つのが大変なくらい分厚い!
普通なら(上)(中)(下)くらいの分冊になるところです。
あまりの厚さに、買ってはみたものの、
そのまま「つん読」になってはや半年。
今日、読んでみたらこれが面白いのなんのって、
序章・一章だけで180ページ。
ここまでで、一本映画ができちゃいます。
劇を観た人にはわかると思いますが、
あの炭鉱での悲惨な伝道生活のなかから
絵を描く、ということを見つけるまで。
ここまでで180ページです。
でも決して読みにくいことはなく、
ぐいぐい引き込まれてしまいます。
名家の生まれながら、
どうしても他の人のように俗世で成功できず、
自分だけがぬくぬくと豊かであることが心苦しく、
人の不幸には敏感だけど、
思い込みが激しく人の気持ちを察することに疎い。
そんなフィンセント・ゴッホが絵を描こうと思い立ち、
弟のテオがこの兄の願いをかなえると決意するまで。
本の中で、というか私の脳内で
市村さんや今井さんが演じてくれますので、
さらに劇的であります。
舞台を観た人にはもちろんおススメですが、
何をしてもうまくいかない、
人生の意味がわからない、
自分の将来が不安、
うまく人と関われない、
世の中の不公平さや汚さに嫌気がさす、
など
今生きることに悩んでいる人にもぜひ読んでいただきたい。
彼が何度も何度も挫折する姿と、
彼を取り巻く人々の言動とに、
いろいろ考えさせられます。
…まだ、ゴッホの物語は始まったばかりですけど、
すでに私はひとつの作品を読み終えたくらい充足してます。
*読売演劇大賞で、市村さんはこの「炎の人」で最優秀男優賞を獲得しました。
おめでとうございます!
(大賞の詳細については、明日書きます)
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