東京上野の国立科学博物館に行くと、
青白いライトに照らされて、天井までの細長い水槽の水の中を
ゆっくり、ゆっくり、舞い降りては降り積もっていく
マリンスノーを見ることができます。
地球の海の底の底の、音のない世界で、
1秒も止むことなく静かに、静かに、白いものが積もっていきます。
それは、プランクトンの死骸。
目に見えないくらい小さい生き物が、最後の最後に行き着く墓場です。
地の底、海の底は真っ暗な地獄かもしれないけれど、
博物館の水槽に再現されたそれを見ると、
まるで天国のようにも思える美しい光景です。
「石油の呪縛と人類」という、ちょっと小難しい新書の序章「石油の誕生」を読んだ時、
私はこのマリンスノーの光景が、頭に浮かびました。
びっくりです。
1年で0.1mm積もるというマリンスノー。
それが悠久の歴史の中、1千万年経つと、1kmの層になる。
厚さ1キロですよ!
そして、
かつてのサッカー日本代表の岡田監督の言い草ではありませんが、
「地球ができて40億年」
地球に生物が誕生してからは、38億年と言われています。
・・・つまり、38kmのプランクトンの死骸の層!!
これが、石油のもとだったとは。
現在、石油価格はうなぎ上り。
一方で、石油を燃料としてすべてがまわっている人類の営みが、
地球温暖化の元凶であることはすでに明白。
後のことなどおかまいなしの掘りっぱなし、捨てっぱなし、流しっぱなしの歴史を知るだけでも、
自分たちの生活の危うさが見えてくる1冊です。
また、
これまで「石油」をめぐって人類が繰り広げてきた愚かしい戦争の数々。
世の中の紛争を見るとき、
「そこに石油はあるのか?」
「そこをパイプラインが横切るか?」
この二つを考えるだけで原因がわかってきそうな勢い。
だから、どうすればいいのか、答えはすぐには見つからないけれど、
マリンスノーは1年でも0.1mmしか積もらない。
「地球ができて40億年」でも、「人類がでてきて1万年」そして「石油を使って」は?
私たちが40億年分を100年もたたないのに使い果たそうとしている、という事実だけは、
不気味な感触を体に植えつけます。
国立科学博物館に行ったら、
ぜひ、マリンスノーをご覧ください。
そして、この本を手にとってみてください。
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