映画・演劇・本・テレビ、なんでも感動、なんでもレビュー!

  1. 13 view

「赤と黒」


赤と黒(上)
書くのは好きだが読書が苦手な娘が、
学校の課題でスタンダールの「赤と黒」を
それも1週間で読まなければならなくなった。
読書は自分のペースで味わいつつ読むのがベストではあるけれど、
そういう読書なら嫌いなもの、苦手なものは読む必要がない。
「宿題」だからこそ、教科書だって辞書だって年表だって読む。
彼女にとって今回は「読破」にこそ意味があるので、
「フランス文学を読むコツは、
 最初の3分の1はナナメ読みでいいからとにかくページをくくること」
と、おしえた。
物語の中にいったん入り込めば、
あとは加速度的にのめりこむはず。
「赤と黒」、私には思い出深い小説のひとつだ。
大学生のとき、3年からの専攻決めを前に、
入学時の進路(史学)のままでよいのか疑問を持っていたころ、
私は学校の図書館や近くの古本屋に通っては、
フランス小説や、それに関する評論ばかり読んでいた。
読んではいたが、それは「知っておく」といった
いわば勉強のため、知識欲のための読書だったような気がする。
最初はミュッセとか、短編ばかり読んでいたところ、
「とりあえず、スタンダールの1冊くらい、読んでおかねば」と
名前だけは有名で私も知っていた「赤と黒」に手を出す。
日本文学でも長編は苦手意識があった当時の私にとって、
文庫でも上下巻という長さは、初めてだったかもしれない。
電車の行き帰りなどでブツ切れの時間で読むつもりが、
途中からはまり出して止まらなくなり、
最後まで読まなければ、夜も眠れない状態に!
結局2日か3日で読み終わったような気がする。
さて、
本をひもといて1日目、「1ページしか読めなかった」娘は、
私のナナメ読み指南が功を奏し、二日目「上巻の半分まで読めた」そうだ。
いわく、
「これは、読めるね」
そう。この話は面白いのである。
ジュリアン・ソレルなるイケメンで若い家庭教師に
美貌の人妻がよろめくハナシなのである。
本当は、もっといろいろあるんだけど、一言でいえば、こういうハナシ。
家に勝地涼とか小栗旬とか海老蔵とかが来て、
「奥さん……」ってアツい視線を送ってくるハナシなのである。
ダンナは角野卓造、
奥さんは、ちょっと前なら黒木瞳あたり。
それで、娘の第一声。
「メロドラマだね。女がタルい。
『あなたがいないと生きていけないワ』って、お前子どもいんだろ!
 浮気しちゃってごめんみ、みたいな(笑)」
*ちなみに、
「ごめんみ」というのは、Gacktが浮気がばれちゃったときに、
 すねてる女性に言う決まり文句なのだそうだ。
 Gacktのキャラと「ごめんみ」のギャップで、
 すべてが丸くおさまる、らしい。
 
たしかにたしかに。
娘には、読了後、もう一度感想を聞いてみたいものである。
何百年も生き残っている小説の力をどのように感じたか、
非常に興味がある。
私はこの「赤と黒」をきっかけに「長編嫌い」を克服し、
ほどなく「失われた時を求めて」という大長編に出会って魅了され、
専攻をフランス文学にシフトすることになる。
スタンダールは、その後何十年もほかに読まなかった。
あんなに興奮し、
あんなに「面白かった」けれど、
心に残ったものは何か、と問われると、今答えられるものがない。
同じスタンダールでも、
「パルムの僧院」は読み終わった後、体中がしびれるような感覚があった。
内容の深さではこちらがおすすめ。

パルムの僧院(上)改版
ただし、若いころは何度も挫折した。
読書には内的成熟もある程度必要なのだ、ということを
私は歳を重ねて実感することが多い。
若い人の読書離れが叫ばれて久しい。
本だけが偉いわけではないけれど、
昔は映画もテレビもゲームもなくて、
エンターテインメントな才能は、ほぼ演劇と小説に集中していたはず。
ホメロスは36mmスコープ的超スペクタクル映画だし、
ジュール・ヴェルヌはETだったりスターウォーズだったりするし、
そうい意味で、昔の本は珠玉のエンタメ宝庫であって、、
昔の人は、頭の中にバーチャル映画館を持っていたのである。
だからこそ、
さまざまな古典は映画の原作となる。
この「赤と黒」も名優フィリップ・ジェラール主演でどうぞ。

ジェラール・フィリップ/赤と黒
「パルムの僧院」もジェラール・フィリップ。
私はこれを見て、若いときに読み止した本をもう一度読み始めた。
映画としても、私は「赤と黒」以上によくできていると思う。

【メール便なら送料無料】【DVD】パルムの僧院【完全版】 [IVCクラシックフィルムコレクション]…

本の最近記事

  1. 「桜桃忌」に寄せて

  2. 「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」@村上春樹

  3. 「ヴィヨンの妻」@シネマナビ342

  4. 「人間失格」@シネマナビ342

  5. ユゴー「クロムウェル序文」と「エルナニ」

関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。


Warning: Undefined variable $user_ID in /home/nakanomari/gamzatti.com/public_html/wp-content/themes/zero_tcd055/comments.php on line 145

PAGE TOP