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「非正社員から正社員になる!」


「非正社員から正社員になる!」
時節柄、なんともタイムリーな本である。
ただし、著者はここまで経済が落ち込む前から取材を始めている。
だから、
「派遣切り横行! これからは何がなんでも正社員!」みたいな
集団ヒステリー状態のような口調の本ではない。
冷静で、分析的。
1の事例をもって全体を語るような水増しがなく、
自分の足で稼いだ数々のインタビューに説得力がある。
特に、「非正社員の正社員化」を進めている6社への取材と分析が素晴らしい。
情報・金融、衣料・小売、食品・外食と
立場や事情の違う産業からピックアップ、
それぞれがもつ特殊な事情と「正社員化」とのつながりを
きちんと示す。
しかし、異なる立場の企業であっても、
ぶつける質問はみな同じである。
質問を平準化しているだけに、
共通点と独自性とが際立ってよどむところがない。
企業にとって「正社員とは何か」「正社員に何を望むか」が
手に取るようにわかる本となっている。
その一方で、
自身が企業内での自分の立場を守るために、
会社を相手取って実際に長く苦しい闘いをした経験があるだけに、
「正社員は本当に守られているか」についての記述はなまなましい。
泣き寝入りはするな、しかし
安易に会社と対立するな。
周りの人たちに支持される戦い方を選べ。
会社と戦うときは、やめる覚悟をしてから。
やめる前に、次の働き先を決めておけ。
このあたりは、
「経験者は語る」の極致。
一見冷徹な本のようでいて行間にぬくもりを感じるのは、
そこに「痛み」が存在するからだろう。
著者は『年収1000万円!稼ぐ「ライター」の仕事術』の吉田典史。
「稼ぐ」ことの厳しさを知っているだけに
サラリーマンに対しても、
ただ安定をむさぼるだけの正社員に明日はないことを
しっかり指摘。
「♪サラリーマンは~、気楽な稼業と~きたもんだ~♪」と
植木等が歌うような無責任男が正社員をやれる時代ではない。
単に
「正社員になれば人生バラ色」な本ではないところが
彼の著作たる真骨頂でもある。
若い世代をターゲットにした光文社のペーパーバックスBusinessは
ヨコ書き左とじ。
最初はちょっと違和感を感じるが、
内容に圧倒され数ページでヨコでもタテでも何でもよくなってくる。
若い世代だけでなく、
出産・子育てを経てパート再就職をしている人におすすめ。
中断前のキャリアを生かし、
あるいはパートで積み重ねた実績を評価してもらい、
正社員になる、安定した収入と立場を得る、やりがいのある仕事を任される
ためのヒントが満載だ。
「会社」というものを知っている人にこそ
響くものがつまっている1冊である。
『年収1000万円!稼ぐ「ライター」の仕事術』については、
こちらにレビューを書いています。

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