先月末より急に読むようになったトーマス・マンの作品。
最初は「トニオ・クレーゲル」「ヴェニスに死す」などの短編でしたが、
めざすは岩波新書3冊に及ぶ「ブッデンブロークの人々」。
1835年から始まるこのお話は、
70歳になる祖父、祖母、父母、10歳に満たないトーマス、アントーニエ、クリスチアンの3兄弟と
彼らが住む大邸宅の詳細な描写から始まります。
私は誰がどんな風貌でどんな服装で、家の壁が何色で机の上には何が置いてあって…みたいなところは、
けっこう飛ばして読んでしまうクセがあるんですが、
現在あるゼミで勉強している関係もあり、
小説では「描写」に注意して読もうと思っているので
ちょっとまどろっこしかったけど一つひとつの文章が表すイメージを一つひとつ頭に浮かべながら、
ゆっくり読み進みました。
でも、モタモタしていたのは最初の50ページくらい。
その後はもうマンガか映画を見るような感じで
ストーリーの中を登場人物がするすると動いていくのです。
面白すぎ! 次の展開が知りたくて、本を置くことができません。
昨日第一巻を読み終わり、
今日は第二巻にとりかかってとうとう読み終えてしまいました。
すでに時代は1869年。
34年の間に、二組の祖父母はとうに亡くなり、
父も亡く、ブッデンブロークの当主はトーマスが引き継いでいます。
最初のページで8歳だったアントーニエは42歳にして孫娘がいます。
トーマスの息子、つまりブッデンブローク家の跡継ぎとなる息子は8歳ですが、
この子は父親のような商才ではなく、ピアノの才能があるようです。
ハンザ同盟に属している自由都市の大商人を誇るブッデンブローク家の中に起こる
ある意味どの家でもあるようないざこざと、
決して経験することのできないような貴族的階級の豪奢さと特有の悩みと、
そして
貴族の時代、ブルジョワの時代から、市民の時代へと移り変わる19世紀の大きな流れの変化とが、
美しい町並みや海辺の保養地の描写、季節の移り変わりとともに
少しずつ、少しずつ、しみわたるように読者に伝わってくる物語です。
最後の最後まで読んでみると、また違った感想が湧いてくるかもしれません。
あと1冊。読み終わるのが楽しみです。
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