江戸東京散歩
最近、取材で東京を歩くことが多く、
歴史好きの私としては、
どこに行っても「昔ここはどういうところだったのかな?」と考える。
そんな時、古地図というのはつかの間のタイムスリップの水先案内人になってくれるのだ。
数ある古地図本の中で、
人文社の「切絵図・現代図で歩く」と銘打った「江戸東京散歩」はすぐれもの。
江戸開府400年記念保存版として発行されたこの横長の図録は、
見開きの左に江戸切絵図を、右にそれと同じ場所の現代の地図を配し、
今あるめぼしい建物や道路のあたりを見比べることで、
どんなに変わったか、あるいは
どんなに変わっていないかを実感できるしくみになっている。
大名のお屋敷跡は公園や病院などやはり大きなものになっていることが多いし、
ちょっとした道の曲がり具合が、江戸のころと同じだったりするのを発見するのも楽しい。
また、紀尾井町、加賀町など、大名の名前にちなんだ町名もつけられていたりして、
今さらながらに歴史の重みを感じる。
本の目次のページには
「震災や大戦をくぐりぬけ、激しく変貌する東京にあって、
江戸時代の多くの寺社が、その場所に健在であるのには驚かされます」とあったが、
同じ思いだ。
寺の名前を江戸の絵図に探せば、区画整理でまったく町の形が変わっていても、
あ、ここがそこね、とわかってしまうから便利便利。
町とは、歴史が積み重なって出来るものだとつくづく思う。
江戸の湾にはたくさんの島があったけれど、
それらは埋め立てられ、吸収されていった。
「大島」「京島」「月島」「越中島」そして「佃島」などなど、
かつての島の場所をさがしてみるのも面白い。
自分の家をさがして「ここは海の上か~」という人も、多いのでは?
かくいう私も、その一人。(千葉の今も、東京に住んでいたときも)
この本は地図だけでなく、
「江戸東京セレクト散歩12コース」という歴史散歩のガイドつき。
名所旧跡の紹介も充実している。
「古地図で楽しむ鬼平・忠臣蔵の世界」というのもあって、
フィクションの中の江戸の風景を身近に感じられるページもある。
やはり古地図、現在の地図を比べ、
登場する寺や居酒屋、道場などの位置を番号でおしえてくれる。
実際に歩いてまわるもよし、
小説を引っ張り出してきて、地図と見比べながら読み直すのも、またよし。
楽しみがふくらむ本である。
*このシリーズ、ほかに
「明治大正東京散歩」「昭和東京散歩(戦前)」「昭和30年代東京散歩」などもある。
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