明治天皇(1)
ドナルド・キーンの著作「明治天皇」の第一巻は、
明治天皇の誕生から幼少期に焦点をあてているだけに、
父親である孝明天皇についての記述が多い。
つまり幕末の動乱について、
朝廷側の動きが非常に具体的に書いてある。
もちろん、フィクションではなく、
「明治天皇紀」「孝明天皇紀」など、
歴史的な資料に基づき構成されている。
おもしろーーーーーーーい!!
この前の大河ドラマ「篤姫」では
無言で笛ばっか吹いてた孝明天皇(扮したのは東儀秀樹)ですが、
実際はとってもハキハキした人だったのね~。
手紙もガンガン書いて、それらはたくさん残ってます。
「よきにはからえ」的に、おろおろする天皇ではなく、
自分の、そして天皇というものの、役割と使命をしっかり自覚していて、
ただそれだけに
「絶対外国人を入れない!」っていう
そこに固執したために、
いろいろと軋轢が生じてしまったのねー。
面白かったのは、
異腹の妹・和宮を興し入れさせた徳川家茂(「篤姫」では松田翔太)に、
親しみを感じて接していた、というところ。
当時、
孝明天皇は30歳を過ぎたころ、
家茂に至ってはまだ18とか19とかでありまして、
若くして一国をとりまとめねばならない苦労とか、
けっこうお互い共感できるところ、あったのかも。
孝明天皇は、「攘夷」論者だったけど、
決して幕府を倒したいと思っていたわけじゃないし、
公武合体が成功しないと、和宮だってかわいそう、と思っていたみたい。
「今までと同じ、これまでと同じ」。
つつがなく、伝統を受け継ぎ、次世代にバトン・タッチする。
これが、天皇の使命の一つなんですものね。
とってもアタマがよかったのに、
それに対処できない自分が情けなくて、
「こんなことになっちゃったのも、家茂くんが悪いんじゃないんだよ、
ボクがちゃんとしてないから。ボクの責任だ」という手紙もあります。
(天皇が「ボク=僕=仕える人」って絶対使いませんけど、
シチュエーションわかりやすくするための意訳です。お許しを)
自分こそ、この日本を統べている人間だ、という自覚が、
孝明天皇にはあったわけですね。
徳川の世が300年続こうっていう末の天皇で、
その間、朝廷には政治的なこととは無関係に過ごしてきたというのに、です。
そこだけ見ても、この天皇の自負と責任感がわかります。
でも、うまくいかなくて……。
そして孝明天皇は、酒と女色におぼれていく、のだそうです。
そんな孝明天皇は、
なかなか祐宮(さちのみや・後の明治天皇)を立太子しません。
子どもたちがどんどん早世してしまう中、
ただ一人10歳を過ぎて育ちゆく男の子、祐宮なのに、
どうして次の天皇になる人=皇太子と認めないのか、
これはすごく興味深いです。
「あいつは、オレが重く用いる者を悪く言い、
オレが遠ざける人物を賞賛する。
わが子ながら理解不能。油断してはならない」という言葉
(もちろん、オレなんて言いませんが)も残っており、
同じ屋根の下で生活することなく、
時々会うだけの息子が
あんなにかわいがっていた息子が、
側近の影響なのか女官の影響なのか、
自分の意に反する育ち方をしてしまったことへの苦悩が
にじみ出ています。
だからこそ、
けっこう気の合う家茂との語らいが楽しかったんでしょうね。
家茂が上洛すると、
なかなか江戸へは帰さなかったみたいです。
その家茂が20歳の若さで急死したとき、
孝明天皇はきっと、ものすごく落胆したことでしょう。
そして、
孝明天皇自身もまもなく急逝。
彼もまだ35歳でした。
そして、祐宮が次の天皇に決まります。
まだ元服も済ませていない13歳。
孝明天皇の時代に関白だった人が
そのまま祐宮の摂政に横すべり、
「今までとは、何も変わりません」で始まったのですが……。
さてこれからが
「明治天皇」の時代ですね。
まだ第一巻の半ばです(汗)。
いったい、いつ読み終わるんでしょう?
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