昨日、日本アカデミー賞の各賞の授賞式があった。
結果は「おくりびと」の圧勝。
私も大好きな映画だからうれしいにはうれしいが、
もう少し各賞は割れるかな、と予想していたから拍子抜けだ。
アメリカのアカデミー賞・外国語映画部門へのエールだけではないだろうが、
見ごたえのある映画が続々と封切られた2008年、
ここまで独占するほどだったか?と首を傾げる気持ちもある。
最優秀助演女優賞を受賞した余貴美子は
「票の数えまちがいじゃないか、と思う方もいらっしゃるんじゃないかと思いますが」と
素直に意外性を自認、
それでも満面の笑みをたたえて、本当にうれしそうだった。
私は、松雪泰子にあげたかったけどな。
「最優秀助演」には、
「その人がいなければ成立しなかったくらいの存在感」を感じさせた人を選びたい。
その意味でもっとも激戦だった最優秀助演男優賞は、
山崎努が獲った。
「主役を食った」とさえ言われた堤真一も捨てがたいが、
やはり山崎の醸し出すこなれた軽妙さというのは一段上。
「納棺師」の神妙さ・荘厳さ・美しさ・優しさを彼が体現しなければ
あの映画は成功できなかったのだから、
むべなるかな。
もうひとつ、
「ぐるりのこと」の木村多江が受賞。
よかった!
「主演」女優賞なのだから、
まず、主役じゃないとダメだと思うんだよね。
その意味で、広末涼子とか仲間由紀恵は、ノミネート自体に違和感を感じた。
裏を返せば、昨年の映画は
それほど男性上位だったという証拠でもあるのだけれど、
こうしたなか、二映画で受賞、
それも「まぼろしの邪馬台国」って、ヒットした?
みたいな中での二映画な吉永小百合が、
「山田洋次」「反戦」「サユリストご推薦」の三拍子そろって
もう「定位置受賞」じゃないか、
などとも囁かれていたくらい。
「ぐるりのこと」は、地味な映画だけどものすごく評価を得ていたし、
彼女にあげたい、と思っていたので、とてもうれしかった。
最優秀主演男優賞は、本木雅弘。
「自分らしさ」を追求する「わがまま」にこだわり続けた彼が、
自分の企画で自分が演じ、そして評価につながった。
「ザ・マジックアワー」の佐藤浩市も新境地開拓でよかったけれど、
常連なんで、
今回は、彼しかない。
式や番組の進行については、
場違いなギャグがすべりまくったり、
司会がプレゼンターで、そのうえ身内だったり、
そのことをネタに司会が話を振ったり、と
いつもながら、なくもがなのものがちりばめられ、
思わずチャンネルを変えたくなるほど。
そんなものはいらないから、
各受賞者のコメントをカットせず、全部聞かせてくれ!というのが
私の切なる願いである。
ぜひ来年こそは!
カットされなかったあいさつの中で、
抜きん出て新鮮、かつ光を放っていたのが、
新人賞を受賞した松田翔太。
まだもらうほどの仕事はしていない、
そんな自分がここにいていいのか、という戸惑い、
これをもらって浮かれてたらダメだぞ、という戒め、
オレはまだまだ満足してないぞ、
こんなのがオレだと思われたら困る、という憤慨、
でも、もらってうれしいという素直な気持ち。
ひと昔(いや、ふた昔?)前のとんがった若者なら、
賞そのものを辞退したり、トロフィーを投げつけたり、
「コトバ」ではなく「態度」で、
それも照れ隠しで行き過ぎた態度で示していたかもしれないことを
松田はきちっと言葉にした。
たしかに、受賞対象となった映画「イキガミ」よりも、
テレビの「篤姫」や「花より男子」の映像がガンガン流されるし、
「何でオレ?」の気持ちが渦巻いていたのかもしれない。
彼の場合、
父親も母親も、兄弟も俳優。
やはり心境著しい兄の松田龍平に
「まいった」と言わせるだけの役者か、
すでに伝説となっている父・松田優作の
七光りと言われぬだけのものをもったか、
二世俳優だからこそのハードルの高さを
彼は胸に抱えながら歩んでいることがわかる。
「今は人のおかげでここに立っていると思う。
もう一度、自分の力でここに戻ってきたいと思います」
いい言葉だ。
もう一度、戻ってきたときの彼が、見たい。
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松田翔太のあいさつ@日本アカデミー賞
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