エンロン内部告発者
渋谷の小さな映画館「ライズX(エックス)」で上映されている「エンロン」は、
私が今年観た多くの秀作ドキュメンタリーの中でも、もっとも衝撃的、
かつ考えさせられることの多い素晴らしいものだった。
(1/20より、上映館が渋谷シネ・ラ・セットに移りました・後記)
2001年前後のアメリカで起きた「エンロン事件」というものに聞き覚えがあるだろうか。
あるいは、同じ時期、カリフォルニアで大規模な停電が何回も起こったことを。
これはどうかな?
この大停電の責任を問われた州知事が選挙に負けて、
カリフォルニア州知事になったのは、「シュワちゃん」ことアーノルド・シュワルツネッガー!
これらは全部つながったものなのだ!
そして大停電の理由は、「電力」の売買についての規制が緩和されたことで、
「株」の売買と同じく投機対象となったため。
意図的に州内の電気を一時品薄にすることで値段をつり上げる、エンロンのオペレーターたち。
その結果、カリフォルニア州は、従来の何十倍ものお金を出さないと、
生活に必要な電力量さえ買えなくなってしまったのだ!
この他にも、信じられないほどの倫理無視、会計のイロハさえ無視した粉飾の連続。
これらは、政治的な保護も受けてのさばることができた。
エンロンの最高経営責任者(CEO)のケン・レイは、
パパ・ブッシュとも息子のジョージ・ブッシュとも家族ぐるみのつきあいを持つ。
エンロンの粉飾が明るみに出たとき、
エンロンの会計監査や法律相談をしていた監査法人や弁護士事務所は、
非常に歴史あるところだったにも拘らず、倒産している。
10年ほど前のアメリカの実態を目の当たりにしながら、
一方でずっと違うことが頭をめぐっていた。
そういえば、日本でも粉飾決算に伴って老舗の監査法人が解散したっけ。
それに・・・。
エネルギー会社である「エンロン」が、何かを生み出すのではなく、
株や、他の会社や、電気や、その「売買による値のつり上げ」にかまけて
会社の「時価総額」を上げることだけに血道を上げる。
この構造、どこかで聞いたような・・・。
そう、あまりにも似ている、「ライブドア」「ホリエモン」と。
よく「アメリカの流行は10年後の日本のトレンド」というが、
どうして、他山の石に学ばないのか。いや、悪知恵ばかりを学んだのか??
今、時代は「官より民へ」。
利益を生み出さない出費を許さないという風潮だ。
しかし、「民」とは、「株式市場」とは、「営利主義」とは、そんなにエライのか?
自分が儲かるとなれば、どんな事業にも貸し続ける銀行に、責任はないのか?
映画「エンロン」を見ると、
普通の人が、普通の感覚で「いけない」と思うことを、
彼らは平気でやってのける。
それを後押しするのは次々と改正(改悪?)される「規制緩和」の法律なのだ。
ライフラインに不可欠な電力を投機対象にして、
庶民の生活を成り立たなくさせるようなことが平気で起きる社会。
私たちは、もっと賢くなって、
愚かで欲張りで、「足る」ことを知らない経営者たちに
「ノー」と言わなければならない。
お勉強しなくっちゃ。ニュースの裏側を知ろうとしなくっちゃ。
ということで、もう一冊ご紹介。
粉飾資本主義エンロンとライブドア
著者の奥村宏さんは、ほかにも「エンロンの衝撃」などを出版している。
日本のジャーナリズムは、事件が起きたときは騒ぐけれど、
アメリカと違ってあとから徹底的に検証することがない、という指摘に
思わずうなずいてしまった。
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