「三池~終わらない炭鉱(やま)の物語」は
熊谷博子監督が三池炭鉱の地元大牟田市の協力を得て制作した、
ドキュメンタリーの秀作です。
昨年、東中野ポレポレで上映され、
4月からモーニング上映のみなのに盛況で、
延長延長できて、とうとう一日4回に。
そして、11月にも再々上映、とロングランを重ねました。
約100年続いた三池炭鉱が閉山したのは1997年。
監督はその翌年に三池に行き、「ここを撮りたい!」と思ったそうです。
予算獲得に3年、その後7年かけて作り上げたこの映画は、
人間の営みに対する優しい眼差しと、
事実を事実として取り上げる冷徹さとを併せ持っています。
三池の歴史を作ってきた一人ひとりに、誠実に相対することで、
長い間心の奥底に秘めていた叫びを、浮かび上がらせています。
「負の遺産」と言われようが、
彼らにとって、それは青春であり、思い出であり、生きるよすがであり、
そして忘れることなどできない苦しみ・悲しみなのです。
知らないことがいっぱいありました。
当時の映像や写真を使いながらも、そこにあるような臨場感を感じさせるのは、
今生きている人の証言を生き生きとつないでいるからでしょう。
私が観に行った日は、ちょうど日本ジャーナリスト会議のJCJ賞を受賞したこともあり、
熊谷氏本人の挨拶がありました。
失礼ながらどこにでもいらっしゃるような フツーのオバサンぽい方。
この人の体のどこに、この映画を作るエネルギーがあるのだろう、と思ったほど。
けれど、フツーの人のフツーの生活の価値を知るのは、
フツーの人なのかもしれません。
糾弾するでもなく、慰めるでもなく。
結論づけるわけでもなく、訴えるわけでもない。
ただそこにあった「三池」の光と影を掘り出す。
「三池」を作り、「三池」に生きた人々を綴る。
唯一つ、埋め戻されていない坑道から噴き上げてくる地下からの風に
じっと耳を澄ましながら。
- 映画
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