もう一度、東京でオリンピックを、と石原慎太郎氏は言っているが、
たとえもう一度やっても、1964年の感動はないだろう。
オリンピックというものが、
ただスポーツを愛する人たちの祭典であり、
世界平和の象徴だと信じられていた。
そんなオリンピックがあったんだという証明がこ市川崑#長篇記録映画#東京オリンピックである。
同時代に生きた人にはたまらない、あのファンファーレや、
一糸乱れぬ開会式の整然美。
一転、閉会式は図らずも各国選手が入り乱れて肩を抱き合い、
文字通りノーサイドのホイッスル後を、互いに讃えあった。
最近、「閉会式は国別に入りません」という演出をすると、
結局はみな国別に集まり、国旗を振って騒ぐのがオチ。
「図らずも」
ここに、時代の空気と希望があったのだ。
オリンピック開催自体が日本の戦後復興アピールだったわけだが、
(冒頭であれほど持ち上げてはいるものの、政治的側面は歴然としてあった)
ドキュメンタリー映画の製作もまた、
日本の映画界の総力を終結して作られた。
監督・市川崑
脚本には、市川とコンビの和田夏十や、
詩人の谷川俊太郎の名前も見える。
撮影陣に、溝口健二作品には欠かせない宮川一夫。
映像美のヒミツは、市川・宮川という布陣にあったと納得。
音楽は、黛敏郎。
渋くて重厚なナレーションは、三國一朗である(1965)。
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