アフリカで起こっている日本のブラックバス騒動のような、
「不用意な外来種放流で生態系をメチャクチャにした魚のお話」、
みたいに思っているアナタ!
それは、認識誤りです。
たしかに「ダーウィンの進化論」に関係しますし、
もちろん、そういう魚は出てきますけど。
「ナイルパーチ」という、大きな肉食魚。
つまり、魚を食べて大きくなる魚の王者、みたいな。
とにかく、デカイ。人の身長くらいある。100キロにもなる。
マグロなんかより、ずっとタテもヨコもデカイから、
不気味なほどです。
でも、本当に不気味なのは、
魚じゃなくて、人間なんです。
弱くて小さな魚を食べて生態系の頂点にのし上がったのがナイルパーチなら、
弱くて抵抗のすべを持たない人間を食い物にして、人間界の頂点にのし上がった、
ナイルパーチみたいな人間は、一体誰か。
今、何でもありの弱肉強食の世界で自然淘汰されて、
一体どんな人間が勝ち、どんな人間は踏みつぶされているのか。
弱者はどんな踏みつけられ方をしているのか。
踏んでいる者たちは、それを知っているのか。
知ってて、こんなことをやっているのか?
このドキュメンタリーは、そこを鋭くついてくるのです。
フーベルト・ザウパー監督は、最小クルーで4年間、撮影に取り組みました。
身の上を隠しての潜入取材もしばしば。
撮影資金のほとんどは、わいろと罰金に消えたというタフな4年です。
しかしその長期取材のおかげで、
ナイルパーチの周辺にいる様々な人々は、
工場主も輸送パイロットも、警備員も加工業者も、
牧師も売春婦も、漁師もストリートチルドレンも、
次第に心を開き、本音で語ってくれるようになったのです。
「悪いのは誰だ?」という視点ではない。
よりよく生きるためにみんなが日々やっていることが、
一体どんな世界を作り出しているのかに焦点をあてている。
その愛情と悲しみと憤りが、観る者の心に届くのだと思います。
日に何度も飛行機が着陸しては、
「白身魚フィレ」の箱詰めとして、大量のナイルパーチが今日も輸出される。
その飛行機は、代わりに向こうから何を運んでくるの?
その飛行機は、空っぽのままやってくるの?
ここが、この映画のキーワードです。
今日もどこかでフィレ・オ・フィッシュを食べているアナタ。
スーパーのお惣菜コーナーで、白身魚のフライを買っているアナタ。
私たちが彼らにもたらしているものは何か、
知っておく必要があるでしょう。
「ダーウィンの悪夢」は、渋谷シネマライズで上映中です。
グローバル化と奈落の夢
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