現在全国各地で上映中の「あかね空」。
原作は山本一力ですが、「山本」周五郎チック。
上方から江戸に来て豆腐屋をやろうとする永吉(内野聖陽)と、
それを支えるおふみ(中谷美紀)の家族を中心に、
かつて大橋でわが子とはぐれてしまった老夫婦(石橋蓮司・岩下志麻)との関わりを絡めて描く
人情映画です。
地味ですが、心がじんわりあったまり、やさしい時間が過ごせます。
中谷美紀ははじけまくりだった「嫌われ松子の一生」とはうって変わって、
おきゃんでしっかりものの江戸の女を娘時代から母親役まで端正に演じます。
恋する女のきらきらした感じも、
子どもに対する負い目から溺れるように盲愛する母の愚かさも、
様々な面を見せてくれるのがさすが「最優秀主演女優賞」受賞者だと思いました。
内野聖陽は、二役。
上方言葉の豆腐屋さんもいいけど、後半出てくる型破りな坊主・傳蔵に味がある。
彼の登場により、物語は違った緊張感を持つことになります。
それにしても、この映画、脇がすごい。
出番は少ないものの、鮮烈な印象を与える勝村政信の東男っぷりもいいし、
長屋住まいの庶民の父親を、あますとこなく演じる泉谷しげるもあっぱれ。
しかし、何と言っても石橋蓮司と岩下志麻がかもし出す静かな哀しみこそが、秀逸。
背中で演技するとは、こういうことだというお手本のような2人。
じっと見つめる眼、
黙々と動かす手。
何の説明もなくても、思わず涙がこぼれ落ちてしまうほど心揺さぶられます。
原案は篠田正浩。
CGにちょっぴり甘さはあるものの、セットは素晴らしい。
長屋界隈は、茨城県の江戸ワープステーションにそのまま残されるといいます。
おふみの笑顔が、ひょっこり現れるような気がしてくるかも?
上映館・上映期間の確認は、こちらから。まだまだ全国まわります。
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