高校生の、部活青春物語は、アツイ。
男のシンクロナイズド・スイミングの「ウォーターボーイズ」に始まって、
ブラスバンドの「スウィング・ガールズ」、
高校生だけではないけど、フラダンスの「フラ・ガール」、
そして
今回は合唱の「うた魂♪」である。
今までの映画は
「何もできなかったのが、ここまでうまくなった」
「初めはバラバラだったのに、最後は団結した」
でも今回はちょっと違う。
主人公のかすみ(夏帆)が所属する七浜高校の女子合唱部は、
すでに伝統ある実力派合唱部。
かすみもソロパートを持つくらいの、花形ソプラノパートリーダー、
というところから始まる。
そこに「合唱っておかしくない?」という疑問を呈する女の子が。
「歌っている顔がおかしい」
「あんなに大げさに感情表現するなんて、不自然」などなど。
この「疑問」が、けっこう観客の気持ちをひきつける。
そして
今まで、何も考えず楽しく合唱をしてきたかすみに
「私って、・・・へん?・・・」と思わせるところから物語は動き出す。
自分の歌に陶酔しきったポジティブシンキングなかすみには、
「合唱の王道」と共通した違和感が漂う。
男どもは「かわいいし、歌うまいし」と手放しだけど、
女性はどこかで「うさんくささ」を直観。
それは、映画の中の女の子たちもそうだけど、見ている観客もそうだったんじゃないか?
少なくとも私は、
かすみと一緒に合唱部を盛り立てる部長の楓(亜希子)とか、
かすみを敵視しているさゆり(青柳レナ)の方が、ずっと魅力的に思えた。
そんなかすみが、
物語の最後にはとってもステキな女性になっていく。
歌う顔で始まり、歌う顔で終る。
その顔が、違うのだ。
大したドラマもなく、大したクライマックスもないけれど、
日本中どこででも起きるような、
高校2年生が部活漬けで過ごす夏休みの前と後で、
少女は自然に成長したんだ、ということが描かれている。
そこがいい。
正統派合唱部の七浜高校女子に対抗馬としての、
権藤(ゴリ)率いる湯の川学院男子。
「美しさと正確さvs荒削りと魂」というわかりやすい構図を使いながら、
実はこの2校が最初から相手をリスペクトしているところがミソ。
同じ道を目指すものが、自分にない魅力をそれぞれ讃えあい、競い合う。
「反目」と「ライバル視」はまったく違うもの、と
この映画はさりげなく伝えてくれる。
何だかんだといっても、歌そのものの力が映画の良さ。
もう7年ほど前になるけれど、
息子が入学した高校の合唱コンクールに行って
当時の3年生のあるクラスが歌った「かもめ」(歌詞・三好達治)のアカペラに
体中がしびれ、涙があふれたあの日を思い出す。
歌の力を信じて、
奇をてらわず、もっとストレート勝負でも、若者にちゃんと受け入れられたのではないか?
序盤、脚本がもたつくのがなんとももったいなかった。
*ちなみに、我が家では夫も娘も見て感動し、
夫は「ゴリがうまい! 湯の川学院の『十五の夜』が最高だ!」と
サントラ盤CDも購入しました。
私は、七浜が最後に歌う『青い鳥』がすごくよかった。
これはゴスペラーズ(映画にも審査員役として出演)が実際に音楽コンクール課題曲として
提供した曲です。
楽曲は高度、歌詞もいいけど、この時の七浜のパフォーマンスが抜群。
ぜひ、お聞きください。
明日から上映作品が変わってしまう映画館が多いので、
サイトで上映館を確認してから行ってください!
- 映画
- 20 view
この記事へのコメントはありません。