アカデミー賞最優秀外国語映画賞受賞記念!
「仲野マリの気ままにシネマナビ」に書いた文を掲載します。
死者を包む儀式に愛が宿る
映画:「おくりびと」
監督:滝田洋二郎
配給:松竹
ストーリー●
チェロ奏者としての人生をあきらめた小林大悟(本木雅弘)は、
妻(広末涼子)とともに、故郷山形に移り住む。
実家は母の死後、空き家になっていた。
無職の大悟が新聞の折り込みチラシで見つけた「旅」の仕事は、
実はあの世への「旅立ち」に関わる納棺の仕事だった!
最初は妻にも言えず、ただ高給にひかれて始めた大悟。
だが社長の佐々木(山崎努)に付き従い様々な人の死に遭遇するうち、
『納棺』という静謐な儀式に潜む、愛と優しさを感じ始める。
(9月13日より全国公開中)
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「人の死」それも「死体」を扱う仕事とは、一体どういうものか。
気味の悪さ、怖さ、汚さ。
異臭を放ち、細胞が分解していくさまは、できれば見たくない。
しかし、そんな死体も自分の知人であれば、また気持ちが違う。
その「体」の中に宿っていた「魂」を愛し惜しむ人たちの気持ちを汲んで、
私たちは「遺体」という言葉を使う。
淡々と納棺の儀式を繰り返す本木・山崎の所作は、文句なく美しい。
遺族に納得のお別れを贈る気遣いと死者への敬意に、幾度となく涙がこぼれる。
思わず「こんなふうに納棺されたい」と願うほどだ。
単に葬儀の話ではなく、
いくつもの家族についてこまやかなドラマをはさんでいるところがいい。
大悟と、幼いころ生き別れた父親の関係を追う挿話も無理がない。
すねたり反駁したりしていても、
実は求め合っているのが親子だということを、
おしつけられることなく感じられる。
- 映画
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