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「カメレオン」

藤原竜也主演の映画「カメレオン」を見てきました。
監督は、阪本順治。
脚本が、丸山昇一。
「野獣死すべし」など、
松田優作の代表的アクション映画を手掛けた丸山昇一が脚本ということで、
ちまたの映画評はのきなみ
「藤原竜也は松田優作を越えられたか?」がテーマ。
そういうふうにしかこの映画を見てもらえないんじゃ、藤原クンがかわいそう、・・・と思っていたが、
実際映画を見てみると、
そういうふうにこの映画を見てしまうのも「しかたないかな」と感じる。
何せ、作りが「優作」モード。
「これ、松田優作にアテ書きしてない?」と思うシーン、多々あり。
既視感というか、
いやおうなく、藤原演ずる「ゴーロ」に松田優作がかぶってくる。
ひと言で言って、「昭和の映画」なのだ。
出てくる町並みも、昭和。
出てくる人たちも、昭和。
繰り広げられるアクションも、昭和。
映像の、ちょっとただれた感じも、昭和。
平成生まれの人間が、20歳になろうという2008年、
こういう映画の作り方をする理由は何だったんだろう。
平成生れの人には、かえって新鮮だとふんだのだろうか。
ダメだ。
このテの映画自体が、私にはダメなのかもしれない。
だから、
この映画を見て「よかったー♪」と思った方、
以下の感想を読んで怒らないでネ。
ただ、藤原竜也の大ファンとして、
本当に消化不良な映画だったので、
その気持ちは正直に書こうと思います。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
藤原竜也に悪役が無理、とは思わないが、
どちらかといえば、知能犯。
氷のように冷たい、クールな微笑にゾッとするようなワルが似合う。
あの人形のようにきめ細かく白い肌と黒目がちな瞳、整ったくちびるをもった彼に
ヒゲつけて髪の毛ボサボサにすればワイルドになる、と思った人の気が知れない。
どんなにワーキングプワっぽくふるまっても、所詮は「乞食王子」。
端正な人となりが透けて見えてしまう。
可哀そうなくらいだ。
事件の発端となるホテルにゴーロが居合わせた理由だって、
藤原を主役とするなら
「チンピラが仕掛けた結婚サギ」じゃなくて
「卒業パーティーでひと騒ぎ起こしたセレブな私立校の不良少年たち」の方が
リアリティーが出るように思うくらいだ。
藤原に、傭兵として訓練を受けてきた人間のようなざらつき感、
虚無の中でも本能的に周囲への注意を怠らない動物的なニオイがしない。
それは
敵役・木島を演ずる豊原功輔にもいえる。
この役にはビジネスマンでも通用し、元傭兵でも通用する体形と眼力がほしい。
実際に殺陣はなくともアクションOKの俳優、
たとえば堤真一とか、あるいは筧利夫などがよかったのでは?
つまり、脚本に破綻がみえるのだ。
ゴーロはかなりヤバイ人生送ってきたという設定のわりに、
証拠品への配慮も逃亡の仕方もヌケまくりだし、
敵側も、単に「抹殺」すればいい人間を「焼却」寸前まで生かしておく、その理由が希薄。
問答無用の暴力かと思いきや、ワル同士の仁義による正に「殺人遊戯」的な場面もあったりする。
時間的な観念もラストの方はなし崩しで、
「この人、さっき撃たれたのに、
 いつ病院行って、いつ義手つけてもらったの?」っていうくらい、荒唐無稽。
笑いの要素も入っているし、
自分の中のテンションを、いつ上げていつゆるめていいのか、戸惑いました。
あと、
冒頭で藤原にあれだけワイルドなオトコぶりを演じさせたんだったら、
ちゃんと濡れ場を作ってあげないと。
せっかく現状から脱皮したくていろいろなことに着手している藤原くんですから、
徹底的にオトナの役をさせてあげましょう。
これじゃ、
その分野(?)じゃ「四つの嘘」の勝地涼くんに、大きく水をあけられてしまいます。
藤原くんは、この映画でいろいろ勉強しただろうし、
実験もしただろう。
「カメレオン」とは、変幻自在という意味だそうで、
ゴーロはいろいろな面を見せなくちゃいけなかったんでしょうが、
いきなり別人格が出てくるようなインパクトはなかったし、
どれも連続性のある一人の人間にしか見えなかった。
板についたハードボイルドって、難しいモンですね。

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