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「五弁の椿」


[DVDソフト] 五瓣の椿
山本周五郎の原作を、野村芳太郎監督・主演岩下志麻で1964年に映画化されたものです。
名画座系の映画に詳しいモイラさんが、「岩下志麻が絶品!」と賞賛していたので、
いつか見たいと思っていたら、
今週WOWOWでオンエア。
1部・2部続けて3時間の長丁場ですが、まるで飽きさせず、
テレビの前から一時も離れられず、のめりこむようにして全部見てしまいました。
大きな薬問屋の一人娘・おしのは潔癖で、
色狂いの母(左幸子)を恥じ、
奉公人上がりの入り婿で病に伏せっている父(加藤嘉)に同情し、看病に励んでいた。
その父が亡くなったとき、母から明かされる出生の秘密。
おしのは、母にとりついて母を堕落させた男たちを憎み、
その身を捨てて次々と復讐していく。
死体のそばには、必ず椿の花。
与力(加藤剛)は、この連続殺人事件の担当者として、
犯人の女に犯罪者の匂いが感じられないことをいぶかしがり始め、
犯罪者を捕まえるためというより、いつしか魂を吸い寄せられるようにして
彼女を追い始める。
振袖姿の若い岩下志麻が、その幼女のような可憐さと妖しい魔性の魅力をあわせもち
光り輝くと同時に匂い立つほどの美しさだ。
また、
ストレートな濡れ場には至らないのに、男女のからみがものすごく官能的。
声と仕草とシチュエーションで感じさせるところがお見事。
昔の映画は本当のエロティシズムを知っている。
捕まって牢で処刑を待つおしのは「使命貫徹の歓び」でどんどん明るくなるけれど、
最後にどんでん返しが待っている。
因果応報のけじめがきっちりついているところが、
黙阿弥の歌舞伎をほうふつとさせ、江戸の匂いを感じさせる。
人に人が裁けるか、という重いテーマもきちんと入れながら、
非常に娯楽に富んだ名作である。

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