おととい、ドイツ映画祭2007でルビッチのことを書いたので、
サイレント映画をもう一本紹介します。
昨年の東京国際映画の一環として、「ニッポン・シネマ・クラシック」という
時代劇の特集が組まれました。
その中で、1本だけ、
マキノ省三監督のサイレント映画「実録忠臣蔵」(1928)が上映されたのです。
それも、弁士・伴奏つきで!
(2006年10月22日 於・シアターコクーン)
ルビッチなど、ヨーロッパのサイレント映画の伴奏はピアノやオルガンが主ですが、
日本はちょっと違います。
「あー、メリーさんメリーさん・・・」に代表される洋ものの伴奏はバイオリンが多い。
今回は、和洋合奏団という、ピアノ、バイオリン、トランペット、三味線、鳴り物という編成です。
合奏団のバンマスさんは、大学院でこうした音楽の研究をしている人でした。
研究と実践、尊敬します。
なぜこういう編成の伴奏になったかというと、サイレント映画が発達したとき、
かつて芝居小屋付だった楽士と、
外で宣伝していたチンドン屋さんとのミックスで作られていったからだということです。
活動写真も一日にしてならず、歴史をひきずって形成されるんですね。
浅野匠之頭が松の廊下を歩いて来る時の、
「ドン。ドン。ドン。ドン。・・・」という太鼓の音。
映像に奥行きが生まれます。すばらしい。
洋楽の音色も、時代劇だけどちっとも違和感を感じません。
弁士の人もすごかった。二時間しゃべりっぱなし。
ある時は女、ある時は男。時に役者、時に語り。
落語家みたいなものですね。
映画の前後にいろいろなエピソードも話してくれました。
サイレント映画がヘンに早回しなのは、本来手回しのものを
機械にかけて回しているからなんだそうです。
今回も、たちまわりのところは「1秒で5人は斬ってる」という早業で、
このところだけは、弁士はお休みでした。
手回しのときは、人気俳優の様子とか、そこだけスローモーションにして
弁士がたっぷり説明してたりしたかな?
バレエなんかでも、ダンサーの踊りっぷりでテンポ変えるもんね。
(セルロイドのフィルムは焼けやすいから、あんまりスローは無理だろうけど)
焼けるといえば、この「実録忠臣蔵」実は火事で大半が焼失していた!
一時は公開も中止したけど「観たい」の声に押されて上映。
その時、討入りの場面なしっていうわけにいかないので
前年に撮った違う映画をつぎ足したそうです。
このハナシ、けっこう有名らしく、通は映画を観るときに「千恵蔵はどこに?」とか
「龍之介の場面はない」とか、役者さがしのトリヴィアで昔から盛り上がっていたそうです。
私は、つぎはぎ前と後で、映画のトーンが急に変わったのにびっくり。
陰影とか、アングルとか、同じ忠臣蔵でもまったく違う。
当たり前かもしれません。
忠臣蔵で「何を」いいたいか、
その時々によって違うからこそ、何本も作られるんでしょうから。
みつからない吉良をおびき出すために、
「義士全員その場で自決!」のフリをするという演出も、
初めてでした。
客席は7割が高齢者。2割が中年、1割若者。
楽しかったです。
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