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「日本沈没」


日本沈没 スタンダード・エディション DVD
昨日は防災の日。
私が子どもの時は「関東大震災」の発生した日として、この日を迎え、
「地震が来たらすぐ火を消す」「戸を開けて出口を確保」
「トイレはスペースの割に柱が多いから潰れない」などといった教訓を
何度も教え込まれた。
でも、「関東大震災」は、かなり遠かった。
今は、「阪神淡路大地震」を経験、多くの人が身近な人を地震で亡くしている。
毎年のように、あちこちで震度5やそれ以上の大地震が発生、
今も仮設住宅にお住まいになったり、変わり果てた町並みをどうすることもできないという事態が
そこここで起きている。
1973年、小松左京が「日本沈没」を書いた時、それはSFだった。
地震の多い日本で、火山帯の広がる日本で、富士山が爆発したらおしまいだな、という
漠然とした不安はあったけれど、
「今すぐ日本が沈没する」と言われても、
それは「宇宙人襲来」くらいフィクションなお話だったと思う。
だからこそ、ヒットした。そんな気がする。
しかし、2006年、同じ「日本沈没」がリメイクされたものを見ると、
私はこれを「フィクション」だとは到底思えない。
もちろん、
だから日本を脱出しなければ、と思うほど緊急ではないにしろ、
本当に近い将来あるかもしれない、と思わせる怖さがある。
たとえ日本全体が沈没しなかったとしても、
地震があって、都市が崩壊して、脱出できる人とできない人がいて、おろおろ逃げ惑う人がいて。
それは、現実だろう。
一国の島国が「沈没」する、という設定だって、今やフィクションではない。
太平洋上の国・キリバスの大統領は、地球温暖化を原因とする海面上昇で、
「わが国は早晩、海に沈むだろう」と明言し、
すでにそうなった時のための全10万人移住計画を発表、
国民の脱出のため、職業訓練なども含め、各国への移住支援を要請した。(読売新聞より)
日本が沈没した場合の海外移住についても、リアルに描いている。
難民になったら受け入れ先はあるのか?という問いに対し、
「各国が温かく手を差し伸べてくれました。めでたしめでたし」でも、
「宇宙世紀XX年、宇宙コロニーへ脱出」でも、
今は国民が同じくらいウソっぽく感じてしまう状況にあるということだろう。
今回の「日本沈没」は、非常によくできた映画だと思う。
科学面、政治面でのリアリティ、
市井の人々の心の動き。
震災を体験した人と、していない人との温度差。
それでいて、フィクションだからこそ語れるあの結末。
人々は、娯楽と楽しみを求めて映画館に来る。
これは、震災の教育映画ではないのだから。
深刻な問題を上質のエンタテイメントに仕上げようとするスタッフの熱の入れように、
俳優たちも渾身の演技で応える。
特に大地真央の女性大臣に、私は感心した。
原作にはないキャラクターだが、特出したヒロインでもなく、しかし粘り強い、
こういう人がいてくれたらいいな、と思わせる政治家像を大げさにならず、演じていた。
草ナギ剛の、ヲタクを絵に描いたような「一人で生きられます」男が、
「誰か」を背負うことによって強くなっていく、
その変化ぶりも見事。
柴咲コウの、不安ではち切れそうながら必死で生きていく姿にも好感。
しかし、この映画の本当の力は、
ファーストシーンで赤黒い炎に焼き尽くされる都市を描いた後で、
日本各地の四季を美しく写しだしたイントロなのかもしれない。
この国土が、この懐かしく柔らかい風景が、
これからすべてあの赤茶けた色に塗りつぶされていく・・・。
それを予感させただけで、もうこの映画は成功しているのである。
特撮など、ディテイルに関心のある人は、本編より長いメイキングが収められている
以下の版をおススメします。
監督が「エヴァ」の仕事で出会っている庵野秀明もデザインに関わり、
特撮関係では最高峰といわれるスタッフを擁して作り上げたという本作品。
新ガメラシリーズに関わった樋口真嗣監督のこだわり、とでもいいましょうか。
手を抜いていません。
日本沈没 スペシャル・コレクターズ・エディション

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