早春物語
原田知世と林隆三の、甘酸っぱい恋のお話です。
若いとき、年上の男性に憧れる女の子の、情熱と無鉄砲さ。
それを、こわれもののようにそっと扱う大人のオトコの優しさと悲哀。
17歳の少女が精一杯背伸びをして、42歳の男に認められようとする。
忙しく働いていることがわかっていても、
勤務時間に電話をし、職場を訪ねていく少女。
非常識な女、なんじゃない。
わかっていても、抑えようのないうねりのような衝動が、彼女を動かす。
その身勝手さえ、
男は笑ってやさしく赦してくれる。待っていたかのように、時間を作ってくれる。
若い時は、原田知世にすごく共感した。
同じような恋をしたことのある身としては、
林隆三の、「しょうがないなー」みたいな、
さも全部わかったようなオトナの対応を見て
「何で中年男って、みんなおんなじなのよ!」と
かつて感じたもどかしさが甦えった。
けれど、今この映画を見ると、
今度は林隆三の胸のうちが手にとるようにわかる。
彼が少女をかわいいと思いながらも決して挑発に乗らないのは、
彼女を傷つけまいと思ったのではなく、
自分を守るためだったのだ。
「若さ」を失ったものにとって、「若さ」はそれだけで美しい。
ところが、若い人にとって、「若さ」はハンディにさえ思える。
だから、少女は背伸びする。
まばゆいばかりに輝く彼女を見つめながら、
男はその向こうに「いつか捨てられる」自分の姿を感じずにはいられない。
だから、
男は彼女に正面から向き合おうとしないのだ。
体当たりでぶつかってくる少女を、必死で受け止めている。
その堰が切れた時、二人はどうなるか?
雨に濡れた二人のキスシーンに続く、
空港でのやりとりの意味を
私は二度目でようやくわかった。
オトナの恋は、せつなすぎます。
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