「椿三十郎」・・・とタイトルを聞いただけで、
「ウンダッダッダッダ、ジャジャンガジャン」と音楽が聞こえ、
無精ひげに精悍な瞳の三船敏郎が肩を右に左に揺すりながら、
人生面白そうに歩く姿が目に浮かぶ・・・。
みんな大真面目に演技しているのに、お腹がよじれるほど可笑しい。
人間の営みの滑稽さをデフォルメすることによって、
人生の真実があぶり出されていく、上質のコメディです(1962)。
時代劇としては、壮絶なラストシーンが話題に上りますが、
話としては、腕に覚えのある寅さんが無邪気な青年たちに
人生訓をたれる、みたいな面白さがあります。
「正義」を持ち出され、たちまち扇動されてしまう、周りが見えていない若造たちに、
生きていくということはどういうことか、
本当の「正義」はどこにあるかを、説教くさくなくおしえていきます。
そんな三十郎も、
入り江たか子演じる城代家老の奥方の前ではたじたじ。
「女」で「高齢」で「軟禁されている」という弱者の代表でありながら、
よよと泣くこともなく、にっと笑っていい味出してます。
いくら腕っぷしが強くても、三十郎、頭が上がりません。
本当の「強さ」とは何か、今度は三十郎がおそわる番です。
「椿三十郎」は、
現在森田芳光監督がリメイク版を製作中です。
脚本は当時のものを使い、主役は織田裕二、
ラストで一騎討ちをする室戸(前作では仲代達矢)に豊川悦司、
城代家老の妻が中村玉緒、
前作で加山雄三がやった若侍は、
「デスノート」以来、一躍脚光を浴び始めた松山ケンイチです。
リメイクする、ということはこの映画が大好きだからこそだと思います。
その意味では私と森田さんは同類。
でも、私にとっては、三十郎は三船でしかありえません。
そう思っている人は多いと思うのですが、
逆に「椿三十郎」と言われても「何それ?」という人もいるわけで、
リメイク版でこの話を知った人たちが
オリジナル版にも関心を持ってくれるといいなと思っています。
カラーでやると、あの「墨で塗った赤椿」は、
やっぱり真っ赤に映るんでしょうねー。
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