残菊物語(DVD) ◆20%OFF!
この前NINAGAWA歌舞伎で現代の尾上菊五郎、菊之助親子の演技を見たわけだけれど、
彼らの背負っている「名前」や伝統の重さを実感できるのが溝口健二監督の名作「残菊物語」。
1939年。昭和14年の映画である。
時代設定は明治。
歌舞伎の名跡・尾上菊五郎を継ぐ位置にあってちやほやされ、
才能がありながら甘えと驕りで自分を見誤る菊之助と、
彼の才能を信じて親身になって尽くす奉公人お徳の苦労物語、
といってしまえばそれまでの話だが、作りがいい。
誤解から冷遇されたり、悲運が重なったりはするけれど、悪人がいない。
また、お徳は決して自分を卑下しない。
この自尊心の強さによって、物語が「昔の話」にとどまらないのだ。
苦節5年、大衆芝居で地方のドサ回りまで経験した菊之助に、
再び表舞台に這い上がるチャンスが訪れる。
その舞台が拍手で終わったとき、彼を支え続けたお徳が奈落で見せた勝ち誇ったような笑顔。
男女の色恋とは別の次元で、
自分が見込んだ役者が、とうとう大物として世間に認められた、
ずっと前から自分にはわかっていたものを、という満足感。
わかる・・・。
この気持ち、新人の役者に心動かされ、ずっとその人を見続けてきた人なら皆・・・。
そして、さすが松竹、劇中劇の歌舞伎が素晴らしい。
日本の舞台芸術の粋が映し出されている。
カメラがいい。
溝口カメラの代表・宮川さんではないけれど、
1シーン(それも長い!)1カットはこの頃も同じ。
奥行きも、長さもという、ぜいたくなセット組みがなくては、あんなシーンは撮れない。
ロケがいい。
外にもセットを組んだということだが、
特に最後の「船乗りこみ」は、優勝パレードとカーテンコールを川でやった、みたいな豪華さで、
気分が高揚した。
約70年前というふるいフィルムなので、ボツボツいって見にくいし聞き取りにくいのは否めない。
それでも一見の価値あり。オススメ。
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