陰陽師
夢枕獏の人気シリーズを、滝田洋二郎が映画化。
平安の陰陽師・安倍晴明(あべのせいめい)役で、
若き能楽師・野村萬斎が独特の空気感を醸し出し、この映画を成功に導いている。
脚本は「救命病棟24時」などを手がける福田靖。
重厚で緻密な感情表現が光る。
フツウの人間の中にあって、
妖怪ではないけれど、妖怪の世界に通じる者、という異質な存在感を、
萬斎はフツウと違った立ち居振舞い・物言いで、見事に表す。
「型」を持っている人間の強みを、この映画ほど見せ付けているものはない。
萬斎の「特別感」に対し、
てろてろの「フツウ」感溢れているのが源博雅(みなもとのひろまさ)役の伊藤英明。
滑舌もイマイチ、顔の表情も弛みっぱなし、
これで「時代物」やっちゃっていいのかなー??と思わせておいて、
この味がなかなかヨイ。
その「能力」故、人の心も読めてしまうのだろう、誰にも気持を許さぬ孤高の男、晴明が
なぜ博雅にだけは無防備になるのか。
「ほんとに、お前はいいヤツだなー」というセリフは、
二人の関係をよく言い当てている。
そして、「特別」な男がもう一人。
汗一つかかずにテキをやっつける涼しい目の萬斎と対抗するのは、
汗まみれ、目くじら立ててほえまくる導尊(どうそん)役・真田広之だ。
彼の渾身の演技あってこそ、晴明の強さも引き立つというもの。
2001年製作と、そんなに昔の映画ではないけれど、
今や二人はエンタメ界にとって、とてつもない存在となっている。
片や世田谷パブリックシアターの芸術監督を引き受け、
能狂言のよさを内包しながらストレートプレイにどんどん挑戦。
片や「世界のサナダ」となって、ハリウッドで、香港で、中国で、
英語・中国語などを操っての活躍。
内裏の白い砂の上で、死闘を繰り広げるこの二人の対決は、
眼力だけを見比べても鬼気迫るものがある。
エピソードとして挿入された「鬼」の女、夏川結衣も好演。
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