私の娘は「ハウルの城」が大好きだ。
DVDを持っている。
「私はもう3回も見た!」(+映画館の1回)
「お母さんも絶対見るべき!」
そういわれながら、かなりの月日が経ち、
昨夜、思い出したように鑑賞。
面白かった。
何がすごいって、加藤治子がすごい。
ハウルのかつての師匠で、王宮付の魔法使いでハウルと対決する役。
出番もそれほどないのだが、
彼女が「声」で演じ始めると、物語の奥行きがぐっと広がる。
荒地の魔女役、美輪明宏もさすがだ。
特に、魔力を失って「ただのおいぼれ」になってからの演技が秀逸。
はじめ、「声優、途中で変わった?」と勘違いしたほど。
ふり幅の広い表現力で、うならせる。
呪いでおばあさんになってしまうソフィー役・倍賞千恵子も、
見る前はミスキャストじゃないか?と思っていたが
なかなかよかった。
ベースが「若い娘」だと思うと違和感があるんだけど、
彼女が「おばあさん」をやっていると考えるとウマイ。
その「おばあさん」が、時々若くなるところも、ウマイ。
そしてハウルのキムタクは。。。
ものすごく悪くはないんだけど、
やっぱり周りがすごすぎて、
発声一つとっても別世界って感じ。
まあ、加藤治子と一騎討ち、っていうのは、
誰がやっても難しいでしょうが。
でも、
いつもは優しいハウルの眼がつりあがって、
「悪魔」入ってきたぞ~!っていうときでも、
声の表情がまったく変わらないのは、ちょっと・・・。
多くの場面で、「絵」に助けられていました。
ストーリー的なところでいえば、
「魔法」の自由自在さをうまく使って
楽しい仕掛けがたくさんあるストーリーだけれど、
物語の構成には緻密さにかけるところがいくつか見受けられた。
荒地の魔女が、ソフィーを使ってハウルにかけた呪いは
一体なんだったか、よくわからないし。
「ハウル」は世間から恐れられていたはずなんだけど、
その話は途中から全然触れられなくなっているし。
「ハウル」は火の悪魔と「契約」をしたというけれど、
それはなぜ、どんな条件だったのか。
そのあたりは映像でごまかされた感じでうまく解決しちゃうし。
最後、すべてが「ハッピーエンド」じゃあ、
ちょっとご都合主義じゃありませんか?
「さだめ」を覚悟し、人生に絶望しながら、
それでもあふれ出てくる愛情をどうすることもできない、
みたいなところが、
途中まではとてもカタルシスだったんだけどなー。
宮崎駿という人は、
基本的にペシミストなんだと思う。
この人の破壊的、絶望的な作風、
ある意味「ハウル」のように誰もよせつけない殺気のようなものをもっている。
それをうまく和らげ、
でも彼のもつ類まれなエネルギーを殺さずに仕事をさせているのが
鈴木敏夫なんだろう。
「ポニョ」もエンディングを変えた、という。
「ハウル」もきっと、
最初の構想と違った結末だったのではないかと想像。
万人うけするためには「ハッピーエンド」が必要だったのかもしれない。
けれど、
私は宮崎駿とともに、奈落の底を見てみたかったような気もする。
- 映画
- 26 view
この記事へのコメントはありません。