太陽の黙示録 【前編-海峡-】
2002年8月、東京を大地震が襲う。日をおかず関西圏でも同じような大規模地震が発生。
富士山も爆発、本州はフォッサマグナを中心に中部地方で二つに分かれてしまう。
政府は札幌に臨時拠点を置き、国連を通じて中国とアメリカに大型援助を申し込む。
北と南に分割されてしまった日本は、被災から15年後、どのようになっているか。
被災した一人の少年とその15年後を通して、
「あなたはどう考え、どう決断し、どう動くか」を観る者に迫る作品。
原作はかわぐちかいじ氏の漫画。まだ連載中だという。
単行本の1~4巻をWOWOWがアニメ化したものが「前編・海峡」及び「後編・国境」だ。
「15年後」の話であるといいながら、
これは現代の世界に起こる様々な事象の話である。
国を失ったパレスチナ、分断された朝鮮半島、そして阪神淡路大震災。
世の中の多くの政情が「暴力」と「陰謀」で動かされる。
それでいいのか?という問題提起を
「これ以上死人を出したくない」「目の前で人が死ぬのはもういやだ」の一点で
抗う勇気に昇華させている。
それは、今の時代、あまりに楽天的で、あまりに無垢すぎると批判を受けるかもしれないが、
「生き残った自分たちこそ、命の大切さを知る者」という叫びには、
人を圧倒する真実がある。
阪神淡路大震災以後、さまざまな形で震災経験者がクリエイティブな仕事をする時、
「亡くなった人と生き残った自分」を必ず念頭に置き、
「生き残った自分には何ができるか、何をしなくてはならないか」を
強く感じさせる作品を作っている。
私はこの作品を見て、昭和20年~40年代の映画やドラマ、アニメと同じ匂いを感じた。
あの頃もまた、
「生き残った自分」をまっすぐにみつめた人たちが作品に命を吹き込んでいたのかもしれない。
「痛い思いをしなければわからない」ではあまりに情けないが、
せめて「痛い思いをした」人の気持を素直に受け入れ、感じとる心を持ちたい。
人間は極限状態でも、けっこう人間らしいんだ、という体験もまた、
私たちはここから知ることができる。
太陽の黙示録 【後編-国境-】
マンガの第一巻はこちら
太陽の黙示録(1)
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