フランスの同名小説を原作としたドイツ映画「素粒子」。
名前からしてカタイ。
何じゃこりゃ?
でも、T-Rexの歌と「ヒッピー」なる言葉で始まるこの映画には、
「愛」やら「家族」やらまで長い説明なしでは通じなくなってしまった現代の不毛を、
1970年代の能天気な明るさで包み込み、
原作の難解さをうまく料理しています。
時にエキセントリック、時にノスタルジー、そして、時に迷路。
二人の異父兄弟の、
40年にわたる「愛」への渇望の軌跡を辿りながら、
生きることが下手な人たちに寄り添う、
そんな2時間です。
連想したのは、「嘘とセックスとビデオテープ」でしょうか。
愛とは、虚無。そして、希望。
人生とは、妄想。そして、絶望?
自分の愛の形が見えなくて、もがき苦しむ兄と、
誰を愛しているかははっきりわかっているのに、言い出せず形にできない弟。
「母」であるより「女」であることを誇りをもって優先した母親に対する、
「自分だけを愛してほしい」という子どもの見えない叫びが切ない。
屈折した心は、「受け入れてくれる人」の出現で解放されていきます。
でも、「受け入れてくれる人」がいなくなったら?
人が安心して自分を生きられるには、何が必要なのか。
何でも選べる自由。選ばなければならない不自由。
答えなど、どこにもない映画です。
でも、だからこそ心にしみるのかもしれない。
東京渋谷のユーロスペース他で、
3月24日から公開中です。
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