ロシアの片田舎にある孤児院に、
イタリア人夫婦がやってくる。
車が到着すると、子どもたちは一番いい服を着て、笑顔で迎える。
もしかしたら、あの人の子どもになれるかもしれない!
イタリア人夫婦は、意中の男の子・ワーニャと対面、
彼を気に入る。
そしてワーニャは、イタリアでの生活を夢見る。
その孤児院に、もう一人の客が。
ワーニャと親しかったムーヒンの実の母だ。
「やはりムーヒンと一緒に暮らしたい」
思い直して孤児院に引き取りに来た。
しかし時すでに遅し、ムーヒンは誰かの養子になった後で、もう孤児院にはいなかった。
ワーニャは考える。
ぼくのお母さんも、もしかしたら迎えにくるかもしれない。
イタリアに行ってしまったら、
もう一生会えない!
ワーニャは孤児院を脱走、少ない情報を頼りに母探しの旅に出る。
養子縁組のブローカーは金の卵を失うまいと、やっきになって探し回る。
果たしてワーニャは母に会えるのか?
母は生きているのか?
母は、ワーニャを歓迎するのか?
映画「この道は母へと続く」は
「一度は捨てた子どもを引き取りに来た母親」という新聞の小さな記事をもとに作られた。
主人公のワーニャなどごく少数を除いて、出演している孤児はみな本当の孤児だという。
ちょっとさみしげで、でも生活力の旺盛な子どもたちの日常が
愛情あふれる視線で描かれている。
カネ、カネ、カネの大人たちにも、
心の奥底には温かいものが垣間見える。
その昔、日本の大映映画に「小さな逃亡者」(1967)というのがあった。
両親を亡くした男の子が、ソ連(当時)にいる叔父に会いに一人で旅に出る話。
ふと、トーンが似ているな、と思った。
「小さな逃亡者」は日ソ合作の第一号作品で、
ソ連でもヒットしたのだという。
ワーニャ役のコーリャ・スピリドノフの瞳が忘れられない。
また
脂ぎったマダム(養子ブローカー)のマリヤ・クズネツォーワ、
最後の最後まで話に絡んでくるマダムの運転手・グリーシャ役のニコライ・レウトフなど、
舞台などで活躍する実力派が脇を固める。
悲惨でもなく、お涙ちょうだいでもなく、ご都合主義でもない。
彼らの心情は、くどくどと語られることはない。
けれど、
私の胸の奥からは熱いものが湧き上がり、
後味のよい涙となってにじみ出てきた。
10/27よりBunkamuraル・シネマで公開。以降全国ロードショー。
家族で見るのに、いい映画です。
子育てを終えたご夫婦で、しみじみ見るのもいい。
早くに家族と離れて一生懸命生きてこられた方々にもおすすめです。
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