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「ぼくはラジオ」

「僕はラジオ」は、
高校のアメフトの監督が、一人の知的障害の青年に出会い、
彼に「学校」という居場所を作ってあげたという実話映画です。
最初、言葉を発することもできなかった彼が、
昼休みに校内放送でランチのメニューを宣伝するほどになっていくのです。
後に「何度高校2年生をやってもいい」という「名誉生徒」の称号をもらった彼は、
50歳を過ぎてもまだ「高校2年生」で、アメフトの副コーチさえやっています。
実話であることを除けば、ありがちなファンタジーとさえ言えますが、
一つだけ、とても重いエピソードがあることによって、
この映画は、他の「慈善慈愛ものがたり」と一線を画しています。
それは、このアメフト監督が、
「ここまでやるか」と思わせるほど、青年を親身になって世話し、保護する理由です。
「12歳のとき、新聞配達の途中で、ある家の軒下から、動物のようなうめき声を聞いた。
監禁されていたのは、自分と同じくらいの少年だった。
私はその後2年間、同じ道を通って配達を続けたが、彼に対して何もしなかった」
何もしないこと。できなかったこと。
心のひっかかりを残したまま数十年の月日がたったのです。
慈善でもなく、同情でもなく、彼は自分の良心を取り戻すために必死になった。
そこを描こうという視点が、眼差しの優しさと同時に、厳然と存在する偏見を淡々と描いて、映画全体の質と仕上がりのよさにつながっています。

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