エリザベス
物語は16世紀、エリザベス1世が「謀反人」として処刑寸前だった立場から
「女王」へと運命が大逆転する即位前後のお話。
孤独と不安に満ちた幽閉時、エリザベス(ケイト・ブランシェット)を支えたのは
ロバート卿(ジョセフ・ファインズ)。
彼への変わらぬ愛情と、女王という立場で夫を選ばなくてはならない苦しさに、
エリザベスは女王になっても孤独と不安の虜である。
そんな中、彼女はイングランドの女王として少しずつ手腕を発揮し出す。
1998年の封切り当時、映画館に観に行ったこの映画を、深夜、久しぶりにTVで堪能。
10年前には感じなかった物語の深さに、感動してしまった。
昔は2人の恋の行方にばかり目がいってしまって、
どうやって政略結婚話をかわしていくのか、とか、
2人の愛はどうなるのか、とか、
取り巻きのうち、誰が敵で誰が味方か、などばかり気にしていた。
それもストーリーなのだが、
今回、私はもっと深い「エリザベスの敵」をはっきり意識した。
それは「ヴァチカン」である。
エリザベスはヘンリー8世の子ども。
ヘンリー8世は、自分の離婚・再婚を正当化するため、
イギリス国教を作った王。
エリザベスが即位したということは、カトリック界にとってはとてつもなく大問題なのだ。
彼女がカトリックを擁護するといえば、それで安泰。
いずれにしても、彼女は「つなぎ」だと思っているお歴々に対し、
エリザベスは敢然と「自分らしさ」を押し出していく。
議会でイギリス国教を承認させる法律を通させるところは圧巻。
「誰もあなたをおそれてはいない」と面とむかって言われるほど力のない新米女王が、
カトリックの司祭たちをどう押し込め、
どんな演説で議会の雰囲気を変えていくか。
一つ、また一つ、自分の足固めへと布石を打っていく過程でどんどん成長していく
エリザベスの描き方が見所だ。
彼女が「ヴァージンクィーン」と名乗り、「イギリスと結婚する」と言った背景には、
カトリックを退けることで自らが国民から奪った「聖母マリア信仰」に代わる
「処女マリア」に自分がなろうという決意でもある。
「イギリス国教」とは、つまり、「私が神だ」ということなのである。
ここは、10年前はまったく気がつかなかった。
単に「好きな男をあきらめ、女だからと軽く見られないため」の策だと解し、
この映画への評価も低かった自分の底の浅さに恥じ入ります。
現在公開中の「クィーン」はエリザベス二世のお話。
平時と戦時という緊張感の違いはあるが、「女王の孤独と決断」は共通するテーマ。
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