ヘレン・ミレンがアカデミー賞主演女優賞を獲ったことで、
彼女の「エリザベス女王」ぶりだけがフィーチャーされてしまった感のある、「クィーン」。
でも、「そっくり」なのは、彼女だけじゃない!
チャールズ皇太子と皇太后だけは「違う」とわかるけれど、
あとはいずれ劣らぬ「そっくり」さん大集合だ。
特に、トニー・ブレア首相夫人役のヘレン・マックローリーと
フィリップ殿下役のジェイムズ・クロムウェル。
この2人は「まさか本物?」と思わせるほど似ていた。
まだ幼いダイアナの息子たちも、それっぽいし、
現実とフィクションの垣根がなくなるほど、「再現」に力を入れている。
だから、ニュース映像と切替わっても、どちらが本当かすぐには判断できないほど。
そんな中で、ダイアナの死亡事故、そして葬儀へと話が進んでいく。
「クィーン」の苦悩や王室のあり方を描いている一方で、
ダイアナの存在感がいまだに私たちの心にあることを再認識させられる映画なのだ。
ニュース映像以外でダイアナ(らしき影)が出てくるのはほんの一瞬。
それでも、この映画はダイアナを偲ぶに十分な力を持っている。
それにしても、ここまで王室をカリカチュアできるというのもお国柄か。
首相夫人が思いっきり女王の悪口を言う場面など、
観ているこちらがドキドキしてしまう。
バッキンガム宮殿前に積まれた花束をどうするかという場面や、
「母親を亡くした子どもたちを慰めよう」と、祖父のフィリップ殿下が
嬉々として鹿撃ちにでかけるところなどは、
王室と庶民感情の乖離をうまく表現している。
ただ、日本との類似も感じられた。
「労働党」の党首ブレアが、必ずしも「王室打破」を掲げていない。
ダイアナというリトマス紙によって試された王室のあり方、という見方もできようが、
「とにかく私たちの側にいて」という、庶民の望み、王室への愛情を表現した映画、ともいえる。
ちょっと浮世離れしているけれど、愛すべき老婦人としてエリザベス女王が描かれていることが、
その証拠のように思えた。
日比谷シャンテシネでは4/14(土)から、
4/21(土)からは、公新宿武蔵野館、シネ・リーブル池袋など、全国ロードショーです。
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