トロイ
この映画を成功させたのは、一にも二にもブラピのアキレウス造形。
いわゆる「トロイの木馬」で有名なこの話は、
ホメロスの書いた叙事詩「イリアス」にあるのですが、
本来、アキレウスというのは、強いけど鼻持ちならない、いやなヤツなんです。
アガメムノンに自分の女奴隷をとられてヘソを曲げ、「もう戦争はしない!」とふて寝している間に、
弟分が自分になりかわって討って出て、殺されてしまう。
すると、今度は見境なく復讐。
もっとオトナになれよ、アキレウス!
女神テティスの血をひいた、ヒーローでしょ!
ところが。ブラピのアキレウスは違う。
行動は同じだけど、共感できる。一途で、友情にも愛情にも篤い。
自分の大切な人のために動き出すと、周りが見えなくなるだけなのだ。
その純粋なところと、荒ぶるところが表裏一体で、なるほど半神半人であると納得します。
イリアス=トロイアとは、今のトルコ西海岸地方にあった国の名。
海一つ隔ててギリシアと隣り合わせです。
トルコ(小アジア)には昔から金とか鉄とか、資源もあって、力のある国が幾度となく勃興しています。
当時のギリシャにとっては、黄金の国だったのです。
「イリアス」でもっともカッコよく描かれているのは、実はトロイの王子のへクトル。
日本でも判官びいきは世の常、
義経を筆頭に、平知盛など、敗将の勇姿は涙とともに語り継がれていますよね。
端正で上品。勇敢なるも冷静沈着。その上友情と義理に篤い。
トロイアの若き後継者として言うことなしのヘクトルが、
その優しさゆえに弟の愚挙に足をひっぱられ、滅びていくのです。
神の子アキレウスに一歩もひけをとらない闘いぶりは、イリアスの至宝!
しかし、今回は、ブラピにもっていかれてしまってます。線が弱いですね。
余談ですが、
この前「ウルルン滞在記」で、照栄がトルコ犬に「出会って」いました。
リーダー格の強い犬の中に「ヘクトル」という名の犬がいたのです。
今でもトルコで「ヘクトル」といえば「信長」くらいすごい名前なのです。
トロイの老王は名優ピーター・オトゥール。
威厳と苦悩を併せ持つ賢人を、存在感たっぷりに演じています。さすが!
アガメムノンは…。すご~く俗物に描かれてる。
アガメムノンといえば、平幹二郎でしょう。
「グリークス」の平さんに勝るアガメムノンはいない、と私は勝手に思っています。
*2006年7月8日のMixi日記をもとに書き足しました。
- 映画
- 19 view
この記事へのコメントはありません。