ある夜、両のてのひらを血だらけにした女性が、ふらふらと救急病院に入ってくる。
カージャックにあったという。
半ば放心状態の女性(ブレンダ)に対し、警官(ロレンゾ)が質問しているうちに、
奪われた車の中には息子がいたことが判明、
周囲はたちまち緊迫感に満ちていく。
カージャックに遭ったという場所は、アームストロング団地のそば。
低所得者向け集合住宅で、そのあたりは治安が悪いと評判だった。
その団地の管轄であるロレンゾは住人をよく知っており、
彼らに協力を求めながら事件を解決しようとする。
しかし、ブレンダの兄ダニーもまた警官で、「やつらは犯人をかくまっている」と決めつけ、
ただちに団地を封鎖、住人の反感を買い、コトはかえって紛糾する。
対立するロレンゾとダニー。
しかし、二人に共通する思いがあった。
ブレンダはウソをついているのではないか?
カージャックはなかったのではないか?
息子は、・・・殺されているのではないか?
子どもが奪われた、と泣き叫ぶこの女性が・・・。
もう一人の重要人物が、カレン。
十数年前に行方不明になった自分の息子を探すため始めた活動を組織化し、
同じ思いの母親たちに、子どもの捜索の手助けをしている女性だ。
「私は子どもの生死にこだわっています」
彼女の、鋭い目と静かな語り口が、押し殺したような悲しみの人生を想像させる。
これが実話をもとにした同名小説の映画化だというから、
アメリカの闇はつくづく深いと思ってしまう。
しかし、すでに日本でも、対岸の火事とはいえない状態になってきた。
ただ違うのは、子どもの誘拐事件の数。
カレンが捜索の手伝いを呼びかけると、たくさんの人がかけつけてくる。
みな、かつて「自分の子」のために人の助けを借りた人たち。
そう思うと、気が遠くなりそうだ。
ブレンダの息子はどこに?
ブレンダはウソをついているのか?
子どもを奪われた母の嘆きは、芝居なのか?
警官ロレンゾ役に、サミュエル・L・ジャクソン。
ブレンダには、「めぐりあう時間たち」などに出演の実力派、ジュリアン・ムーア。
彼女のキャスティングは監督より先に決まっていた、というから、
プロデューサーのスコット・ルーディンの入れ込みようがしれるというもの。
「フリーダムランド」は、子どもに対する親の愛情のかたちが様々にあらわれる、
鎮魂の物語。
新宿武蔵野館、大阪シネフェスタで、1月27日から公開中です。
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