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「レスラー」

今年のアカデミー賞は「スラムドッグ$ミリオネア」だった。
いい映画だけれど、
「アカデミー賞」にふさわしいほどずば抜けていたか?といわれると、
私はちょっと小粒かな、と感じた。
「スラムドッグ&ミリオネア」は、
よくも悪くもエキゾチシズムというヴェールに包まれて
痛さも辛さも緩和されてしまう。
それよりは「ミルク」のほうが問題作だし、
「レスラー」のほうが衝撃作で、
どちらもアメリカ人がアメリカと向き合わねばならない重さがあった。
特に「レスラー」は、
ミッキー・ロークが不死鳥のようにカムバックした映画として
一躍マスコミの口にのぼるようになったけれど、
そんな華やかな話ではなく、
身も心もフトコロもボロボロになって落ちぶれたレスラー・ランディが、
それでもリングの上が忘れられない、
リングの上しか生きる道はない、と
「最後の花道」を自分で仕掛ける話である。
行ってみれば、
アントニオ猪木がダイエーの食品売り場の奥で、
ハムやポテトサラダを量り売りしてました、みたいな
そんな日常。
「あれ?どっかで見た顔だよな」とか言われながら、
黙々と働かなければ、
トレーラーハウスの家賃さえ払えない。
体中はテーピングだらけ、
心筋梗塞で倒れて薬漬け。
それでもリングに上がろうっていう、そのココロは??
こんな無茶なことをしていても、
私はランディに共感できる。
人間は、「生きてる!」って思える瞬間がなければ死んだも同然だ。
自分の居場所はスーパーじゃなくて、リング。
そう吹っ切れてからの彼は、
哀しいまでに美しい。
過去の栄光を背負い、
過去の栄光の蜜の味を忘れられずに
老いさらばえてもそこに来てしまう……。
愚かだし、
懲りないし、
先のこと考えられずにバカみたいだし。
それでも、
こんなに人間がいとおしくなる映画もあまりない。
プロレスなんて、好きじゃないけど、
八百長じみた「ショウ」だから、スポーツって言えるか疑問だけど、
そんな「ショウ」にイノチ賭けてる人たちの気が知れないけれど、
それでも、
この映画を見ながら、
声を限りに「がんばれ!」と応援したくなる。
ギリギリの人たちの、ギリギリの物語。
見たあと、
ちょっとの間、沈黙の中を迷子になってしまう、
そんな映画です。
ミッキーのために、二つ返事で書き下ろした、という
ブルース・スプリングスティーンの曲も心にしみわたる。
おすすめ。

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