ワールド・トレード・センター スペシャル・コレクターズ・エディション / ニコラス・ケイジ
9.11のあの時、
午後10時からの報道番組での実況中継でワールド・トレード・センターから煙が上がるのを、
何の言葉もなくじっと見ていた。
その画面の中に、
まるで映画か何かのように、一機の飛行機が飛び込んできて、
「え? 何の飛行機?」と思った瞬間、
あろうことか、またもやビルに突っ込んだ!
一瞬、何が起きているのかわからなかった。
報道でしょ?
真実でしょ?
まるで事件が起こるのを予測していたみたいに、世界中が定点観測をしていた。
その中で、
悲劇は次の悲劇を呼んでしまった。
オリバー・ストーンが9.11の映画を撮る、と聞いたとき、
正直、どうやって撮るのよ?と思ったものだ。
アメリカ中がヒステリー状態に陥っていて、
この事件を冷静に描くことなど、誰にもできないはず。
「オリバー・ストーンらしさ」が発揮できる映画ではなくなるのではないか。
それは、彼にとっても、アメリカにとっても、
いいことではないのではないか?
だから、どこかでこの映画を見ることを拒否してきました。
たまたま、WOWOWをつけていたらやっていたので、見る機会を得ました。
結論。
2人の警官が生き埋めになり、奇跡的に救出されるまでに焦点を絞ったこの映画は、
被災したすべての人々のその時の絶望と苦しみとを表していた。
助かった2人だけでなく、
見つからなかったすべての人々に対しても、心を配っていた。
たとえば私たち日本人が、
原爆や大空襲や大地震や、
そういうものを題材にして作られた映画やドラマを通して感じてきたものを、
きっとアメリカ人は
この映画を見て感じていることだろう。
南北戦争以来、空襲や白兵戦のない国である。
「なぜ?」「どうして?」自分達のささやかな幸せが打ち砕かれなければならないのか。
その答えのない疑問と向き合わなければならない市井の人々の心情が
この映画にはあふれていると思った。
主人公が危機に遭遇しながら生還する、というハッピーエンドは
アメリカにありがちな結末ではある。
しかし、
これで誰も助からなかったらもうどうにもならない、というほど辛い話。
私も(わかっていたことだけれど)助かってよかった、と心から思った。
「この2人が助かったって、あと何千人もの人々は助かってない。
2人を助けるための努力は無駄ではなかったけれど、それですべては帳消しにならない」
ということを、
きっとアメリカ人も感じるような作りになっていたのがオリバー・ストーンの隠し味か。
「ここはどのビル?」
「ビルはなくなってしまったんだよ」という会話が
アメリカ人の衝撃の大きさを象徴している。
この映画を見る前に、マイケル・ムーア監督の「シッコ」を見ているので、
救出シーンでみんな咳き込んでいること、有毒な粉塵のことなどが気になってしかたがなかった。
この日命を賭けて同胞の救出に手を貸した人々は、
今どうしているんだろう。
保険会社から「因果関係が特定されません」という冷たい通知を受け取り、
働けず、医療費も払えず、不幸な日々を送っているのではないか。
ヒーロー・ヒロインたちのその後をこそ、
また映画で撮ってほしいものだと思った。
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