雑誌『Wife』の「気ままにシネマナビ」に書いた映画評です。
潜水服は蝶の夢を見る 特別版 / マチュー・アマルリック
まばたきで綴る心の旅路
監督: ジュリアン・シュナーベル
映画:「潜水服は蝶の夢を見る」
配給: アスミック・エース
ストーリー●
目覚めると、そこは病室。医師が「お名前は?」と問いかける。
「ジャン・ドミニク・ボビーだ」と何度答えても、医師は首を振り去っていく。
「聞こえないのか…」
ジャンは脳梗塞によって、
周囲の状況はすべて理解できるのに、まばたき以外は何も反応できない症状に陥ったのだ。
「生ける屍」のように見えても、
その内側には豊かな感情と、生きる希望があるのに。
彼は唯一の意思表示である「まばたき」で本を書き上げ、それを証明する。
(2月9日よりシネマライズほか全国ロードショー)
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この映画は、予告編を観ないでほしい。
すべての先入観を捨て、映画冒頭からジャンとともに目覚め、
ジャンの「目」が見たものだけで、この世界を理解するのが醍醐味だ。
撮影のヤヌス・カミンスキーが、巧みなカメラワークでそれを可能にしている。
ある時は「見たもの」を、ある時は「考えたもの」を、そして「記憶」を、「夢」を…。
突然鏡に写った今の自分を見た時の絶望を。
「潜水服」を着込んだ閉塞感を。
美しい色彩とエスプリの利いた笑いが、テーマの重苦しさなど吹き飛ばしてくれる。
ジャンは実際に「ELLE」というフランス屈指のファッション雑誌の編集長をしていた。
20万回のまばたきで綴った自伝を映像化したのが、この映画である。
*日記に転載するにあたり、Webで読みやすいように改行などをしました。
*「気ままにシネマナビ」については、フリーページをご参照ください。
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