川に架けられた鉄橋の上から、馬に乗った男が落下する。
堂々たる体躯の馬が、川の中から引き上げられる。
そして
乗り手の男もまた。
その光景がスローモーションで流れ、
バックにはベートーヴェンの交響曲第7番。
一転、
場面は男の入院する病院へ。
落下で下半身の機能を失った男は、婚約者も失い、
絶望の淵で自殺を考える。
しかし、「薬」までたどり着く「足」がない。
そこに登場するのが、
果樹園で木からやはり「落下」し手を折った女の子。
自由に病院内を歩ける彼女を使って
男は「薬」を手に入れようと思う。
以上が、9月6日封切りの映画「落下の王国」の「外」のストーリーだ。
でも映画の見所は、
男が自分のベッドに遊びに来る少女に向かって話す「おとぎ話」。
二人の想像力は、世界中を飛びまわる。
ある時は、中東。
ある時は、インド。
ある時は、トルコ。
ある時は、サンゴ礁。
ある時は、中国。
千夜一夜の物語から飛び出してきたような、色彩豊かなキャラクターたちが、
時空を越え、世界のありとあらゆる名所をめぐりながら、活躍する。
カラカラとよろい戸を湿った風が通り抜ける
アメリカ南部の病院の、よどんだ空気とは正反対の世界。
無味乾燥の生成りのカーテンで仕切られた、病室の1ベッドの上で、
足の動かない男と手にギプスをはめた少女は、別の誰かになって生きる。
とにかく、映像が美しい。
大画面に繰り広げられる絵本である。
しかし、
エキゾチックな絵本として比べれば、
アニメ「アズールとアスマール」の方が上だ。
次々と変わる場面に、
私は「物語」というより、
世界遺産ガイドブック的風合いを感じてしまう。
「外」のストーリーは、なるほど一つの成長物語として完結する。
しかし、
それを「少女との語らいのおかげ」とするのには構成の織り上げ方が甘い。
この壮大な世界ロケを使って、監督は何を言いたかったのか。
映画が示せる無限の可能性とか、
スタントという職業についてのリスペクトだとか、
そういうことなのかもしれない。
どこかちぐはぐな、消化不良な映画。
辛口のレビューになってしまいました。
大画面で「絵」を楽しむ映画です。
パンフレットが大判で写真も素敵で、
だから期待が大きく膨らみすぎてしまったのかもしれません。
パンフレットは一見の価値あり。
しかし、
パンフレット以上の感動は、映画にはありませんでした。
六本木ヒルズ内のTSUTAYAで、特大パネルなどが展示してあるそう。
明日9/8(月)までです。
(公式サイトの中の「Collaboration」をご覧ください)
「アズールとアスマール」もどうぞ。
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