スワンの恋
マルセル・プルーストの「失われた時を求めて」は、
文学史上にその名を燦然と残す、フランス文学の大作です。
しかし20世紀最高の小説と言われる反面、
「長すぎる!」「くどくどまわりくどい!」「わかりにくい!」「悪文!」
などなど、
好きになれない人からの酷評がワールドワイドにあるのもまた事実。
名作と言われるわりに、
全部読み通した人はあまりいないようです。
でも、ちょっぴり興味のある人、映画を見てみませんか?
「スワンの恋」は主人公マルセルの初恋の相手、ジルベルトの父親スワンと、
母親オデットとの出会いと恋の顛末が、
長~い物語の最初の方に、挿入的に入れられているエピソードです。
「エピソード」といっても、これだけで並の長編小説くらいありますけどね。
主人公の生まれる前の話なので、これを読んだ(あるいは見た)からといって
大長編小説のあらすじがすぐにわかるわけではありませんが、
実は作品の核となるモチーフが、この中にギュッとつまっているという代物です。
そして何より、
19世紀末、第二帝政(ナポレオン三世)時代のサロン的雰囲気満載。
私たちの憧れるパリの魅力の一端をよく表しています。
フランス社交界の片隅で繰り広げられる恋模様。
ココット(高級娼婦)との愛に我を忘れる裕福な趣味人がスワン(ジェレミー・アイアンズ)。
海千山千の玄人女か、それとも心から愛しているのか
淡白にスワンをあしらったかと思うと突然激情を表すオデット。
彼女の気持ちは、ホンモノなのだろうか?
スワンの胸に湧き起こる猜疑心と不安。
そしてどうしてもあきらめられない熱情。
当時お金持ちの社交場の一つだったロンシャン競馬場で待ち合わせをして、
天蓋をはずした馬車に二人で乗り込む。
席上オデットの深くV字に切れ込んだ胸の谷間に添えられたカトレアの花を
「カトレアが・・・」と言って深く挿し込み直すスワン。
それを機に、めくるめく男と女の時が流れゆていく・・・。
オデットの家のベッドで夜を過ごしながら、
どこかで誰かに覗き見られているような感を拭いきれない苛立ちとか、
オペラ座の帰りの夜食の席での恋のさやあてとか、
貴族的な一流の調度品が配された中、
あらすじよりもシーンごとの完璧さに酔いしれます。
男と女の駆け引きを、一幅の絵画のようにして楽しむのに最高。
本編でも重要な役回りをするシャスリュス役で、
アラン・ドロンがちょっとだけ出ています。
彼の醸し出す独特の存在感は、そのままシャルリュスの謎めきとなって心に残ります。
- 映画
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