その向かいに、「貨幣博物館」という、お金の展示館があります。
入場無料だし、一度たずねてみると、面白いですよ。
とにかく、今までに発行されたお金というお金がぜーんぶ見られます。
「和銅開珍」もちろんあります。
私たちの頃は「和銅開宝」だった。
(古銭ビスケットっていうのがあって・・・好きでした。)
日本で一番古い貨幣として、教科書で習った覚えがあるでしょうが、
今現在では「富本銭」というのが一番古いかもって言われてるんですよ。
(奈良の飛鳥で出土したんです)
そういう古代のお金もいいけど、
大判小判がざっくざく、っていう時代もおもしろい。
大判には、墨で発行者というか、認定者の名前が書いてあったりするの。
一枚一枚書いてたのかなー。
今、日銀の建物が建っているところ(半蔵門線「三越前」すぐの常盤橋あたり)は、
江戸時代は「金座」だったそうで、
まあ、仕事を受け継いでいるといえば受け継いでいるよね。
この土地を日銀が購入したと聞くや、
「土砂に金粒が混じってるかも!」と、土砂の採掘を願い出る業者多し!
ほんとにやってもらったら、
当時のお金で千円余りの金粒が集められたというから、
すごーい!
ほとんど「ここほれワンワン!」状態。
願い出た人たちは、ほんとは花咲かじいさんになりたかったんだろうけど、
花が咲いたのは日銀というか国で、
彼らはポチ役だったのねー。少しは給金はずんでもらったかしら?
お札の歴史というのも、なかなか興味深かったです。
最初は兌換紙幣といって、
「それを銀行に持っていったら、額面分の金がもらえる」という証文だったので、
ちゃーんとその旨が書かれていて、
紙幣を振り出した銀行の偉い人の署名があるんですよ。
そう、大判の署名とこれも通じてますね。
「私が保証します!」なわけです。
ちなみに、今のお札は不換紙幣といって、
1万円札を日銀に持っていっても1万円分のゴールドとは取り替えてくれません。
そういや、偉い人のサインもない、どころか
その偉いヒトが、今決まってない状態なんだもんねー。
私が一番興味を惹かれたのは、
「お札に描かれた人物たち」です。
現在の野口英世とか樋口一葉とかは別として、
最初の頃のが面白いのよ~。戦前の。
日本武尊(やまとたけるのみこと)
武内宿禰(たけのうちのすくね)
聖徳太子(しょうとくたいし)
藤原鎌足(ふじわらのかまたり)
和気清麻呂(わけのきよまろ)
菅原道真(すがわらのみちざね)
この中で、戦後もお札として残ったのは、聖徳太子だけ。
それはなぜか?
戦後、日本を一時的に占領下に置いたアメリカのGHQが、
ほかはダメって言って却下されちゃったんですって。
その理由。
「聖徳太子は平和主義と認められるけど、ほかのヒトは軍国主義的なニオイがするから」
どーなんでしょ?
聖徳太子だけベツっていうほど、違いがあるのかなー?
この6人に共通していることは、みんな神社に祀られてるっていうこと。
ヤマトタケルは、神話のヒトだけど、とりあえずそれらしきモデルはいると考えられている。
武内さんは、5人の天皇に仕えた日本最初の名宰相ということになっているけど、
書き残されていることを信じると、300歳くらいまで生きたことになるから、
そのまま信じるわけにはいきません。
「中村勘三郎」みたいな、代々受け継がれる名前だったんじゃないか?とか、
いろんなヒトをミックスして作った理想の宰相だったんじゃないか?とか、
さまざま言われています。
武内さんと鎌足さんは、政治の世界の表も裏も、みたいなイメージがあるし、
長く天皇を補佐してその地位を不動のものにした人たちですが、
ほかは、政争に敗れた悲劇のニオイがしますよね。
ヤマトタケルは、気性が激しすぎて父親に疎まれて、
でもものすごく強いからとにかく「戦ってこい!」みたいな感じであちこち平定、
義経みたいに「戦って、勝てば勝つほど」かえって遠ざけられる、みたいな人生。
最後は白鳥になって飛んでっちゃったっていう激しくも哀しい物語の主人公。
和気清麻呂は、道鏡が天皇になろうとしたのを阻止しようとして称徳天皇に意見したら、
道鏡がだ~いすきな称徳天皇(女性)から、
「お前は今日からキヨマロじゃなくてキタナマロよ!」なんていわれ、
(本当に「和気清麻呂」を「別部穢麻呂」と改名させられた)
身分剥奪、九州に流され、その途中で暗殺されそうになる、というオマケつき。
あとから名誉回復、
その後
「今度は坊主なんかにいいようにされない!」と、寺を排除した都を作ろうとした桓武天皇のもと、
長岡京や平安京の建設にたずさわり、また浮かび上がるけどね。
菅原道真だって、出世競争に負けて大宰府で失意のうちに死んじゃったわけだし。
死んで1000年語り継がれて、今や受験の神様になるなんて、
本人だって絶対想像できない「来世」だね。
彼なんか、ほんと、どこが「軍国主義」なんだろー??
神社に祀られるっていうのは
基本的に「ゴメンネ。祟らないでね」の気持ちが強いので、
悲劇のヒトが多いのはわかります。
聖徳太子だってそう。
子孫皆殺しだし。
「隠された十字架」っていう本、衝撃的でしたー。
この6人は、「日本銀行」のお金の肖像なんだけど、
その前に
明治6年、「国立銀行」が作った紙幣のうち
一番高い二十円札は、
表がスサノオノミコトとヤマタノオロチ、
裏は大国主命(おおくにぬしのみこと)です。
アマテラスに追い出されてしまったスサノオと
そのスサノオの子孫といわれ、出雲に大きな勢力を持っていた大国主命(おおくにぬしのみこと)。
いわゆる「国譲り」の図です。
「大政奉還」とか、天皇の系譜はずーっと続いているとか、
明治維新も一つの「国譲り」だったかもしれない。
大国主命のころだってきっと「国譲り」というには凄惨な戦いがあったように、
明治維新だって、たくさんの血が流れた革命だったわけで。
明治6年としては、あまりにリアルすぎる逸話が
そこには描かれていたのでした。
それも庶民はきっと見ることのない「二十円札」ってところが絶妙。
「たたらないでね」だったのか「これは国譲りだよ」だったのか・・・。
それとも
「俺たちは忘れない」とか
「俺たちは大国主命と同じ運命を辿ったことを、ここに記録する!」だったのか・・・。
お札の絵柄一つ考案するにも、
それに携わった人たちの、いろんなドラマがあるんだろうなー
・・・などと思いつつ、
貨幣博物館を後にしたのでした。
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