トリノ世界選手権でのフリー演技、
ラフマニノフの「鐘」の演技は、
今シーズンのベストともいえる、集大成だったのではないだろうか。
何より体の切れがよく、音楽に対するシンクロが抜群で、
見るものの魂をぐいぐいと引っ張っていく力強さ、
もっといえば、音楽の持つ闇の部分をも体言した迫力があった。
プログラムの終盤、
トリプルアクセルでもなく、連続ジャンプでもなく、
大仰なステップでもないところで
私は「すごいな~」と思わず口にした。
ラフマニノフが音楽にこめた思いを、
そこまでの数分間の積み重ねのなかで、
真央ちゃんがたたみかけるように伝えている。
そんな感じがしたのだ。
ラフマニノフが「モスクワの鐘」というタイトルで作った音楽に、
託した祖国への思いを……。
すると、
会場から期せずして拍手が沸き起こった。
私だけではない。
すべての人が、同じように彼女から「何か」をうけとった。
そう確信した瞬間だった。
滑り終わったときの浅田の表情もよかった。
女王の貫禄。
狩りをする目である。獲物を獲た目である。
支配者の目である。
自分の居場所におさまったことに満足した輝き。
これが「たまたまではない」ことを知っている、
自信に満ち溢れたまなざし。
誰かに勝とうとしているのではない、
自分で自分を凌駕した。
彼女の瞳が、そう語っていた。
トリプルアクセルのダウングレードは残念だったが、
それはジャッジ側の基準の問題であり、
明らかな失敗はなく、
プログラムとしての出来はパーフェクトだったと思う。
おめでとう、真央ちゃん。
この世界選手権が今シーズンの「終わり」ではなく、
四年後に向けた「始まり」であることを、
あなたが一番よく知っている。
あなたが一番楽しみに感じている。
そこが、あなたの素晴らしいところだ。
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それにしても、
男女、ジュニアシニア、すべて日本人が優勝という、
とてつもない日本フィギュア界の黄金時代。
来年の世界選手権は日本開催。
楽しみです。
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