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「ボクらの時代」(後半)

先週ご紹介した「ボクらの時代」の続きが、今日オンエアされました。
お酒がまわるほどに、
海老蔵・竜也・旬の本音トークはさらに加速します。
興味深かったのは
小栗旬が、「将来やりたいこと」。
演出をやりたい、というのが一つ目。
ときどき演技にのめりこめなくなるのは、
「もっとこうしたほうがいいんじゃないか?」と相手に求めてしまうからだという。
二つ目が、「演劇の学校を作りたい」。
俳優の基礎をおしえる学校を作り、生徒たちをエキストラに使う。
「信じられます? 
 今のドラマって、エキストラをインターネットで募集するんですよ」と小栗。
ずぶの素人を寄せ集めるのではなく、
一人ひとりがエキストラとしての自分の演技を真剣に考えるようになれば、
もっとドラマの質があがる、というのである。
私はシェイクスピア俳優として名を馳せたローレンス・オリヴィエが書いた
「演技について」の一説を思い出す。
「3番目の槍持ちは、3番目の槍持ちとして、
 その舞台の主人公であると信じなければならない」
舞台では、背景の一部分に過ぎないような人物でさえ、ゆるがせにはできない。
その緊張感を、小栗は肌で感じ取ったな、と感じた。
こうした小栗の意見に対し、海老蔵が違う角度から切り返す。
「歌舞伎役者には『基礎』がないから折れる人が多い」
逆かと思った。
たくさん舞台を見ていると、歌舞伎役者は「基礎」がある、と見えるからである。
海老蔵の話からすると、
歌舞伎役者はいわゆる口うつしで師匠から芸を習うため、
現象をたたきこむ、いわゆる「まね」から入る。
「こうすれば、こういう声が出る、なぜならば…」という理論的裏づけを持たないので、
なぜ師匠と同じようにできないかを
自分で分析し、修正することができないのだというのだ。
この壁を乗り越えられないのは「基礎」がないからだ、と。
うーん、「基礎」って奥深いわ~。
スタニスラスの理論でがんじがらめになった劇団青俳の時代を
皮肉をこめて語ることが多いあの蜷川幸雄も、
気がつけばスタニスラスに戻ってカオスから抜け出している、と白状しているし。
もしかしたら、
小栗は直観的に、ものすごいことを言ってるかもしれない。
彼は将来、日本に演劇界に大きな影響を与える人になるかも。
そう思ったもう一つのエピソードがこれ。
「今ここで言っても、何が変わるわけじゃないですけどね」と言った藤原に対し、
「いや、そんなことはない。 少なくともこの3人の中では、
お互いが何を考えているか確かめ合えたし」と海老蔵。
「少しずつでも言っていけば、少しずつでも変えていける」と小栗。
海老蔵と小栗は、リーダーシップをとれるタイプ。
外にはたらきかけるセンスを持ち、人を感化する力を持っている。
それがよくわかった。
対して藤原。
小栗の「竜也はいつでも自分の役にぐっとのめりこめるんですよ」の言葉が
すべてを象徴している。
藤原は、根っからの役者なんだ。役に没頭し、憑依し、その役として生きるタイプ。
「スマスマ」でアラン・ドロンが言っていた「アクターかコメディアンか」で言えば、
アクターそのもの。
だから、
いい作品、いい役、いい演出家に出会ってこそ才能を遺憾なく発揮できる。
「もっとほかの、楽な生き方があるかもしれないと、今も思うことがある」という
言葉少ない藤原が発した何気ない一言に
「芝居に生きる」人生を求道的に始めてしまった真剣さと苦悩が垣間見えた。
一見破滅的に生きている海老蔵も、
実は非常な枷のなかに身を置いている。
「弟がほしかった」
「弟のほうが才能があれば、オレはサポートにまわるという選択もある」
「海老蔵を襲名したあとも、本当にオレでいいの?という思いがある」
「オレは、選択肢のない人生なのよ」
重い言葉だ。
それを「運命」と受け入れたのは、つい最近だという。
おそらく、父・團十郎の病気が一つのきっかけだろう。
運命に抗いながら、ついに運命を受け入れて覚悟を決めて進みだした者、
親に反対されても自分を貫き、この道に入った者、
たいした覚悟もなく流されるように始めてしまったくせに取り憑かれ、
苦しみながらよじ登ろうとする者。
楽しみだな~、13年後。
40歳になった小栗は、本当に演劇の学校を作っているかな?
海老蔵は誰と結婚し、歌舞伎をどんなふうに子どもに伝えているのか?
そして藤原は?
俳優としての引出しと幅が、どれほどに増えていることだろう。
若い人の思い描く未来を知りつつ、
エールを送り、観客として見届けられるのは、
少し先を生きているものの特権。
楽しみである。

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