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早坂暁のドラマ「アイウエオ」

Mixiのプロフィールにも書きましたが、
人間の形成期に遭遇したドラマとして、
私という人間を作ったもととなった、といっても言いすぎではない作品が、
早坂暁脚本の「アイウエオ」です。
これは昭和42年~44年にかけ、NHK総合テレビ「少年ドラマシリーズ」にて放映。
土曜の6時からの30分番組でした。この「少年ドラマシリーズ」では、
以降「不知火の小太郎」「からくり儀右衛門(ぎえもん)」などが続きます。
では、「アイウエオ」とは、どんなお話だったのでしょう。
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主人公・江藤重蔵(木村功)は、武士の出身。
明治維新で四民平等となった後、
彼は北海道にいました。
寺子屋のような私塾に子供たちを集め、
読み書きそろばんとともに、新しい世の中のことも教えています。
彼が、寺子屋の壁に掲げている標語はこれ。
「天は人の上に人をつくらず、人の下に人をつくらず」
ここにいるみんなは、すべて平等なんだよ、と
木村功はやさしく、そして厳しく、教え諭すのでした。
しかし私塾の外では、
北海道の原住民であるアイヌ民族は不当に差別され、搾取されていましたし、
「当局」は常に権威をふりかざし、平等の世の中など、どこにもないのでした。
重蔵は、息子の彦一郎の将来を思い、
彼を東京に連れて行きます。
そして、
「人の上に…」を唱えた福澤諭吉の家を訪ねます。
広い広い邸宅の、ひっそりとした畳の部屋にかしこまって座る江藤親子のシーン。
その静謐さ。覚悟のようなものは、今でも忘れられません。
重蔵自身は北海道に帰って今まで同様の生活を続けます。
そして、雪の中、死んでいきます。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
成人した彦一郎は、東京で私塾を開いています。
これからの日本について、熱く語る血気盛んな書生たち。
そんな中、彦一郎は
最近日本の領土となった台湾へ、教師として赴任することになります。
書生たちはうろたえ、彦一郎に思いとどまるよう懇願します。
彦一郎はこう答えます。
「1匹の羊が迷っていたら、あとの99匹をおいてでも、その1匹を探しに行く。
 それが、教育というものだ」
すると、書生の一人が叫ぶのです。
「先生、迷っているのは、私たちなんです!」
台湾の学校へ着くと、
彦一郎は現地の住民の中に入り、差別することなく接します。
学校でも、一生けんめい学問を教えます。
彦一郎の脳裏には、
「天は人の上に人を作らず、人の下に人を作らず」と熱く語り続けた
亡父・重蔵の姿があったのではないでしょうか。
しかし。
その学校は、現地人の暴動に巻き込まれ、
彼が必死の思いで積み重ねた現地人との交流も、
破壊しつくされた学校の教室と同様に木っ端微塵に踏み荒らされてしまいます。
「なぜ…??」
彦一郎の、呆然たる表情は、忘れられません。
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当時小学校3年から5年であった私には、
たくさんの「?」とともに、このドラマは心に残りました。
当時は「天は人の上に…」という言葉は本当に理想的に思いましたが、
福澤諭吉はそれを唱えた同じ口で、
「脱亜論」、つまり、日本は西洋化して「アジアなんかから早く抜け出さなくっちゃ」
とも言っているのであります。
(「脱亜論」は、福澤諭吉の著であるというのが通説ですが、そうでないという説もあります)
列強の仲間入りをするべく富国強兵の道を進み、
台湾を植民地にした日本の政策は、
重蔵が師と仰いだ福澤の思う通りの道でもあったわけで、
そう考えると、
このドラマの行き着いた先が抱えるパラドクスは、
そのまま福澤諭吉の矛盾でもあるわけです。
また、
このドラマは「明治100年」のもと企画された、とのことですが、
早坂暁は、明治維新と終戦後の日本とを重ねつつ、民主主義とは、平等とは、を描いていた
と私は感じます。
世の中をよくしようという、善意にあふれた行為であっても、
傷つく人はいるんだということを
私はこのドラマから教わったような気がします。
江藤重蔵にとて、福澤諭吉が師であったように、
私にとっては、
この「アイウエオ」が師であり、
その象徴が木村功の江藤重蔵なのです。
(熊川哲也に夢中になるまで、私にとって「好きな有名人」は、ずーっと木村功でした)

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