「おひさま」もほとんど全部観ましたが、
こんどの「カーネーション」も、引き込まれます。
予告編があんまり面白かったんで
「だんじりも迫力あったし、全部観た気ぃするわ。おなかいっぱい。
もう観なくてもいいんちゃう?」(すでに大阪弁に影響されとる)
とは思ったものの、
本編を見始めたら、やっぱりとまらん。
脇を固める大人たちの俳優はベテラン揃いだし、
なにより
主人公・糸子の子役の女の子がとってもうまいねん。
今朝も、彼女の無言の演技に泣かされてしもた。(どこまで大阪弁?)
それで思ったのは、
「なぜ朝ドラは女の一代記がよくテーマになるか」。
私は大学時代
すべての物語は「Conflict」(対立)によって成り立つ、と習った覚えがある。
そこに対立するものがあり、問題があり、それを解決することが物語だと。
そのころ、私は先生のいうことに半信半疑だった。
もちろん「対立」は必要だけれど、
それが「物語の核心」とまでは思っていなかった。
けれど、
今、ものかきのはしくれになって、フィクションを正面からみつめてみると、
物語は必ず「Conflict」でできている。
それも、とびっきりの、どうしようもない状況があればあるほど、
人間は追い詰められ、究極の決断をしぼりだそうとする。
それこそが、ドラマを生む。
だからドラマの定番といえば、「◎◎殺人事件」とか、「禁断の恋」なのである。
ほかに
「貧乏からの出世物語」
「スポーツ選手、怪我からの復帰」
「万年最下位チーム、奇跡の優勝」
「エデンの東」に代表される、親と子の対立もよくある。
一昔前なら「身分の差」とか、そういうのも障壁になったけど、
今は、一応、人間は平等っていうことになっている。
韓流ドラマがすごくドラマチックなのは、
韓国ってすごーくお金持ちとそうでない人との差が激しくて、
そこを背景にした作品が多いよね。
あと「北と南」とか、「対立」が日常の中に潜んでいるから、
ドラマにはなりやすいよ。
日本では、「一応」誰もが平等ということになっている。
だから、ドラマは創りにくくなっていることは確か。
ただ、
「平等」と言われていても実は差別が見えにくくなっている、
それが「ガラスの天井」=「女であること」なのだ。
「女が女であること」は、おいそれと変えられない。
物理的には「乗り越えられない障壁」だ。
そして、今はまがりなりにも「ガラス」だが、
昔は、ほんとに頭打ちの天井。
そこで、
「頭打ち」の世の中でその「天井」を打ち破ってきた女性の一代記には、
現代の女性の思いをデフォルメして描く基盤があり、
ウケるのである。
「おひさま」の、
「女性は家庭の太陽よ!」っていうポジティブな生き方は、
「そうだよ、女性は太陽だよ」っていう周囲があって初めて成り立つわけで、
「おひさま」の心地よさは、
だーれも「ヤなヤツ」がいなかった中で、のびのびと
「おひさま」ぶりを表す陽子の生き方がまぶしかったところだったのだ。
翻って「カーネーション」。
いっきなり「男とはりあってどーする??」の嵐。
「なんで男に生まれなかったんだろう??」
「女は家にしかいられない、男に叱られて、そのうちイワシ煮るだけ」
「そんなつまらんものはない」と、
糸子は女性の人生をまるごと否定して絶望している。
まだ小学生なのに。
「おひさま」の陽子と、なんという違いだろう??
「なぜ女は◎◎してはいけないの?」
「女だから」のタブーの一つひとつを、崩してきたのが
近代の女性の歴史でもある。
糸子の時代、
女には参政権もなかった。
それどころか、一般には家を継ぐ資格もなかったし、
財産を相続する資格もなかった。
(明治以降、女性の権利は本当に狭まったのだ)
そういうことを、
「おひさま」はあまり触れなかった。
「丸庵」の一人娘は家を継いだってことになってるけど、
継いだのは、奉公人あがりの優しい婿養子だからね。
どんなに蕎麦うちがうまくても、商才があっても、
彼女は店主にはなれなかった。
でも「いい夫に恵まれて」彼女は家を継いだと同じ幸せを得ている。
そういう、話なのである。
それでも、一人娘の真知子さんは父親に反旗を翻すし、
「白紙同盟」は活躍するし、
「おひさま」もまた、そういう面にまったく蓋をしたわけではない。
ただ、「善意」の面、
まさに「サニーサイド(陽の当たる側)」を中心に描いたし、
結局は愛情ですべてはまるくおさまる、という結末だった。
このネガフィルムから始まった、「カーネーション」。
だんじりに乗りたくて、大工方になりたくて、
だから大工になりたい!っていう糸子。
でも「女と男は違う!」「女は男にはなれん!」と
頭ごなしに自分の夢をぶち壊され続ける。
この女性にとっての大苦境から、
糸子はどう自分の道を切り開いていくのか。
女一人「男社会」に立ち向かう生き方。
大阪局、力入ってるし、
うーん、朝ドラの王道だな、これは。
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