王と長嶋。
二人がプロ野球を盛り立て、日本を盛り立てた時代を
検証しようというNHKスペシャル「ONの時代」の第一回。
まずは、病を得て言葉が多少ままならなくなった
長嶋が、3日間で合計5時間というロングインタビューに応じた、
というところからしてセンセーショナルである。
「(今の体で)テレビに出ないほうがいい、と言う人もいるけれど、
僕はファンに自分(がどこまで回復したか)を見てもらいたい」
長嶋はそう言い放つと、
しっかりとした口調で、自身のこと、王のことについて語り始めた。
天才の長嶋、努力の王、というイメージが
作られたものだということを、改めて知る。
もちろん、
長嶋は天才だし、王は努力してのぼりつめたことには違いない。
しかし、
努力する姿を絶対にファンに見られまいとする長嶋の姿には、
鬼気迫るものさえ漂ってくる。
伊豆の旅館の一室で、
トスバッティングを繰り返していたなどと、
一体だれが思ったであろうか。
至近距離からボールを放る人も怖かっただろう。
彼は少しでも打率が落ちると、
コーチのところに駆けつけるほど研究熱心だったともいう。
そんな長嶋を知らず、
私たちは王が部屋で一本足打法の素振りを重ねる映像を
「見させられていた」のだった。
長嶋が天才といわれる由縁の一つが
大事なところで素晴らしい成績をおさめること。
けれど彼の
「今日、生まれて初めて球場に来る人もいる。
その人のために打ちたい。
毎回、そういう気持ちで打ち続けるためには、
練習するほかない」
という言葉を聞くとき、
常に100%以上の力を出そうとしていた気迫が
他の選手より勝っていただろうとわかるのである。
かつて、
「巨人の星」という漫画があった。
主人公・星飛雄馬は幼いとき、
服の下に大リーグボール養成ギプスをはめて生活した。
宿敵・花形満は、
鉄工所の中で鉄のボールを鉄のバットで打ち返す特訓をした。
常に華やかで天才的な花形が、
自分の編み出した大リーグボール1号を攻略するべく、
人知れずボロボロになるまで特訓をしたことを知った飛雄馬は言う。
「俺は、今、猛烈に感動している!」
そして、
すべてを「持っている」花形は、自分ほどに血の滲むような
「かっこ悪い」練習などしないと思い込んでいた自分の愚かさを恥じる。
私も、
長嶋が打席に立てば、打つのが当たり前と思っていたかもしれない
大バカの一人でした。
彼は、
そんなファンの心理もお見通しで、
それを嫌がりもせず、
「あのころは、夜7時からの娯楽といえば、巨人戦」と言い切り、
だからこそ、自分は打たねばならぬ、と
大きなプレッシャーと戦っていてくれていたのでした。
でっかい人なんだなー。
改めて、尊敬してしまいました。
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