映画・演劇・本・テレビ、なんでも感動、なんでもレビュー!

  1. その他
  2. 18 view

文豪ノート@朝日新聞

今日は休刊日です。
昨日は1年の初めの新聞ということで、
たくさんの特別版が付いていましたね。
皆さんのおうちの新聞では、どんな記事が面白かったですか?
うちでは日経と朝日をとっているのですが、
今回面白かったのは朝日新聞の「第3部」。
「学ぶ楽しさ」と銘打った8ページ(記事は正味4ページ)で、
中でも「文豪ノート」というのが素晴らしかった(構成/星賀亨弘氏)。
夏目漱石、川端康成、松本清張、の「ノート」が写真入りで解説されています。
夏目漱石は英文科1年生だったときの英詩の講義の受講ノート。
さすが東大生?と言う、几帳面さが光ります。
「東大合格生のノートは必ず美しい」の著者・太田あや氏のコメントもあり。
頭の中に既にまとまったものを、ノートに書き写している感じで、
まったくよどみがありません。
ペン書きですけど書き直し、ないですもん。
ただし「美学の起源」の受講ノートには、
枠外に手塚治虫ばりのマンガの落書きあり。
ちょっと安心。(何が?)
川端康成は小説「雪国」の創作メモ。
写真は原稿用紙の裏に、言葉や語句の羅列が書いてあります。
昔の人だから、全部縦書き。
同じ昔の人でも、夏目さんは横書きですから、
「昔」かどうかより、スタイルや文系理系の違いでしょうかね。
目からうろこは「使ったアイデアは消していく」という点。
最初このメモを見た時、棒線で消してあるのは
「これは使えない!」と削除した線かと思ったけれど、
実際は「これは既に使った表現」だから、消してある。
なんと、
川端先生、自分で書いたものはほぼ全部小説内で使っているのです!
無駄なアイデアがない。まずこれがすごい。
夏目さんと同じ、
頭の中で、取捨選択は既に終えられていて、
あとは使いどころだけをまっているという格好です。
その上で、
「同じ表現を二度と使わないぞ!」の気概がまたすごい。
ノーベル賞は、こうして生まれるのでした。まる。
対して、松本清張。
彼のも創作ノートで、小説「火の路」のものです。
同じ小説でもコトバを紡ぐというよりは事実を重ねる部分の多い松本作品らしく、
いわゆる取材ノート然とした様相を呈しています。
かなり克明な図も書き写されていて、
あとから表現を推敲しなおす時の助けとなりそうです。
「(この像は)未完成品か」「菊花の発端となるか」など
その時感じた疑問は赤字で。
予めノートの上3分の1くらいのところに横線を引き、
下に本文と図、疑問や気づいたことは上に赤字で。
矢印線や引き出し線を駆使し、自分の書いたものをさらに解説するような形です。
マネしたいな、と思うのが、
参考資料のページをメモ文の下に、脚注のようにしてはっきり書いてあるところ。
私も書くには書くのだけれど、書いたり書かなかったり、
あるいは書く場所がマチマチで、どこに書いたか後でわからなくなったりする(恥)。
3つを見比べて思うこと。
1.東大合格生のノートは美しいが、見直すことはないだろう。
これは、彼の頭の中にあるものを視覚化しただけなので、
一度書いたことによってすでに知識は定着したと見た!
多くの優等生は「書く」ことが学びなのだと思う。
「きれいに書いてあれば、後から見直してもよくわかるでしょ」
とかなんとか言って、
子どもにきれいに書かせようとする向きがあるけれど、
きれいだ、ということは、後で見直すなどして頻繁に使ってない、
ということでもある。
必要なのは「聞いたことの要点をおさえる能力」であり、
これがなければ夏目センセのようなノートはとろうとしてもとれません。
ノートに美しく書くことではなく、
そんなふうにまとめられる能力の開発をするべし。
2.コピーライター必見! 川端メモ
ひらめいたときにメモする。
自分の中から出てきたコトバを一つとして無駄にしない。
今使えなくても、いつか使える。
同じコトバは二度と使わない。
センスで勝負のコピーライターは、
川端メモの精神を参考にするといいと思いました。
(もちろん、コピーライターに限らず、
 無から有を生み出す仕事をしている人全般に言えることでしょう)
3.一般人の記憶再生装置にピッタリの松本ノート
センスがなければ地を這うような努力の積み重ねで。
天才が「一言もムダにしない」気概で原稿用紙に向かっているなら、
私たち凡才は、さらに工夫が必要。
よくあるのが
「そういえば、前にそんなこと考えたよね」
「いつだったっけ?」
「何でそう考えたんだっけ?」
自分のヒラメキの良し悪しが、そのときわからないのが凡人のカナシイところ。
せめて後から気づいたら、わかるようにしておきたい。
とはいえ、ライターの多くは「お片づけ」が苦手ときているので、
なかなか難しいですけど。
とりあえず、松本ノートは使える。
自分にとっての第一次資料を、あるルールにのっとって作っておくことは、
「後から」の使用効率をかなりアップさせること請け合い。
少なくとも、心がけて書くことにいたしましょう。
走り書きみたいのばっかりな私のノートじゃ、お先が知れるというもの。
いやー、1年の初めにいいもの見せていただきました。
実は、今年は「新聞をじっくり読もう」というのが1年の計。
昔の新聞に比べて、読み応えがない、広告が多すぎる、
インターネットやテレビに比べ、速報感がない、
論説やコラムに文才を感じない、などなど
いろいろと不満があったこともあり、
それに加えて多忙を言い訳にしてじっくり読むことがなくなっていました。
でも
「書いてあることがつまらない」のではなく
「読む力がないからつまらない」という側面もあるのではないか?
そんなふうに思うことがあったのです。
とりあえず、じっくり読むことから。
読んで、考える。
どこまでできるかわかりませんが、
それを「目指す」1年にしたいと思います。

その他の最近記事

  1. 演劇界休刊の衝撃

  2. サイト内検索ができるようになりました

  3. 「ガムザッティの感動おすそわけブログ」2006年〜2019年の道のり

  4. 現在のアクセス数

  5. 新年のご挨拶

関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。


Warning: Undefined variable $user_ID in /home/nakanomari/gamzatti.com/public_html/wp-content/themes/zero_tcd055/comments.php on line 145

PAGE TOP