さきほど帰ってまいりました。
ルグリ、ギエムをはじめ、素晴らしいパフォーマンスの連続でしたが、
私がもっとも心打たれたのは、
オレリー・デュポンとデヴィッド・ホールバーグの
「アザー・ダンス」(振付:ジェローム・ロビンス、音楽:ショパン)でした。
ショパンの曲(マズルカ4曲とワルツ1曲)の曲想にぴったりの
ロビンスの振付も素晴らしいのだけれど、
若い二人の恋の始まりそして高まり・深まりを、
オレリーとデヴィッドが完璧なバレエで綴るその音楽性と正確性。
まるで異なる時代に生きたショパンとロビンスが、
これまた一度も会ったことのない二人のダンサーのために
この曲を書き、この振付をしたごときシンクロ。
そして二人のダンサーは、肉体だけでなく、魂で「恋」を踊る。
とびっきりの超絶技巧はどこにもないけれど、
一つひとつのポジションが完璧で、
どのポーズをとってもすべて美しくデザインされている。
腕の伸ばしかた、後ずさりの仕方、バットマンして空中で体を止める時間、
そのときの、脚の、つま先の、伸ばしかた…。
あるときはともにダンスをする喜び、
あるときは恋のささやき、
あるときは、胸の高鳴り、
あるときは、とろけるような、互いの信頼。
ショパンの豊かな曲想そのままに、
二人はくるくると表情を変え、そしてそれらを一つの物語に紡いでいく。
これぞバレエと音楽とダンサーの蜜月、とうなってしまった。
ほかに目を引いたのは、
フリーデマン・フォーゲルの「モペイ」(振付:マルコ・ゲッケ、音楽:C.P.E.バッハ)。
フォーゲルは首の痛みを理由に「アザーダンス」を降板しているが、
故障しているとは思えない切れのよい動きだった。
ただ、このダンスでは首も痛めるだろう、という想像はついた。
ある意味、「バレエ」とは対極にあるともいえる動きの連続。
「理解できるか?」といわれて「できた」と即答する自信はないが、
音楽との関連性はしっかりとあったので、特異な動きのわりになじみやすい作品だった。
なにより、
フォーゲルの見せた上半身の、しまった筋肉を見、
その筋肉によって表現されたものを見たことが私の収穫。
その昔、かなりひどいパフォーマンスに遭遇して以来、
フォーゲルに対する評価を信じられなかったので。
それにしても、ガラは残酷。
同じ「バレエ」を並べていても、
求めているレベルが違うことが一目瞭然。
一流どころは体の締まり方が違うだけでなく、
必ず自分で自分をデザインしている。
たとえ男性にリフトしてもらっていても、
それは単なるサポートであって、
空中に飛んでいる。最高の形をして、宙に浮いている。
そういう自分を、作っている。
なりふりかまわず跳んだり、回ったり、惰性で止まれなかったり、
そういうことはない。
改めてオペラ座エトワールの実力を見せ付けられた気がします。
(そして初デヴィッド・ホールバーグを堪能。アザーダンスだけでなくプルーストも)
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